Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月3日 No.3425  行政改革をめぐる重要課題について聞く -行政改革推進委員会

経団連は9月5日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(筒井義信委員長、山本正已委員長)を開催。規制改革とデジタル・ガバメントの推進をテーマにそれぞれ政府における取り組み状況等について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 規制改革の推進(井上裕之内閣府規制改革推進室長)

規制改革の推進にあたり、政府は第三者機関を設置して取り組んできた。2000年以降を見ても、01年の「総合規制改革会議」を皮切りに、約3年ごとに会議体を設置してきた。

規制改革に取り組むにあたっての着眼点は大きく3つある。

1つ目は岩盤規制改革である。長年議論しながら改革が難しい分野の改革であり、医療、介護、保育、農業、労働等が典型例である。

2つ目は新たな経済社会に対応する規制改革である。シェアリングエコノミーや再生可能エネルギー、ビッグデータ、人工知能等の活用を念頭に取り組む。

3つ目は現場のニーズを踏まえた規制改革である。時代の要請にそぐわない規制を「規制改革ホットライン」で受け付けて対応している。

今年7月に設置期限を迎えた「規制改革推進会議」は、16年9月の発足以降、「行政手続コストの削減」「牛乳・乳製品の流通改革」「電波制度改革」「放送をめぐる規制改革」「オンライン医療の普及促進」「教育における最新技術の活用」「副業・兼業におけるルールの見直し」「介護離職ゼロに向けた対策の強化」等のさまざまな課題を取り上げ、検討結果を5度の答申に取りまとめた。政府は答申事項を「規制改革実施計画」として閣議決定し、各府省の具体的な取り組みにつなげている。

現在、規制改革推進会議の後継組織立ち上げの検討を進めている。新しい会議体では、「経済財政運営と改革の基本方針2019」で示した「Society 5.0実現の加速」に資する規制改革に取り組むことが重要になると考えている。

■ デジタル・ガバメントの推進に向けた政府の取り組み(向井治紀内閣官房内閣審議官)

デジタルを前提とした社会が到来するなか、紙の業務を中心とした行政のデジタル化は急務である。IT戦略「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、デジタル・ガバメントを重点取り組みに位置づけており、デジタルを前提とした行政の実現を目指している。

デジタル・ガバメントの推進をめぐる主な取り組みを2つ紹介する。

1つ目はマイナンバーカードの普及促進である。同カードは、最高水準のセキュリティーでサイバー空間上の本人確認を可能とするデジタル社会の基盤である。マイナンバーカードの普及に向けて、(1)同カードを健康保険証として利用可能とする「オンライン資格確認」の導入(2)民間のキャッシュレス決済事業者等と連携してカード取得者を対象に「マイナポイント」を付与する施策の実施――等を予定している。こうした取り組みを通じて、22年3月末に「ほとんどの住民がカードを保有」する状態を実現したい。

2つ目は政府情報システムの予算・調達の一元化である。各府省が個別にシステムを調達・構築するため、重複投資の発生やシステムのレガシー化等につながっている。そこで、(1)内閣官房の下にシステム関係予算の一括計上(2)予算要求から執行段階に至る一元的なプロジェクト管理の実施(3)ベンダーとの技術的対話を取り入れた調達・契約方法の試行――に取り組んでいく。

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わが国の試練は少子高齢化である。人口に占める高齢者の割合が増加するなかで、支える側の若者と支えられる側の高齢者との間で世代間対立が発生するおそれがあり、税や医療保険等の社会システムを最適化して公平・公正な社会を実現することが喫緊の課題である。ICTやマイナンバー政策の推進は課題解決に向けた有効な手段であり、今後も精力的に取り組んでいきたい。

【産業政策本部】