Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月10日 No.3426  健保組合を取り巻く状況や次期医療・介護保険制度改革に向けた考え方聞く -社会保障委員会医療・介護改革部会

経団連の社会保障委員会医療・介護改革部会(藤原弘之部会長)は9月20日、都内で会合を開催し、健康保険組合連合会(健保連)の河本滋史常務理事から、健康保険組合を取り巻く状況や次期医療・介護保険制度改革に向けた健保連の考え方について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 現役世代の保険料負担の増加と世代間・世代内の負担のアンバランス

高齢化の進展により、医療・介護保険制度における現役世代の保険料負担は年々増加してきたが、2022年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者入りすることに伴い、現役世代と高齢世代の負担のアンバランスは一層顕著になると見込まれる。

年齢別に1人当たりの医療費・保険料・自己負担の変化額を見ると、09年度から16年度にかけての7年間において、25歳から64歳までの現役世代は保険料負担の伸びが医療費の伸びを大きく上回る一方で、65歳以上の高齢者については保険料負担よりも医療費の伸びが大きくなっており、医療保険制度を通じた現役世代から高齢世代への所得移転が強まっているといえる。

健保連の推計では、健保組合の平均保険料率は19年度の9.218%から、22年度には9.8%、25年度には10.4%まで増加すると見込まれる。介護や年金もあわせた保険料率では、19年度の29.091%が、22年度には30.1%、25年度には31%に増加する。

この間高齢者医療のための拠出金負担も増加し、健保組合の義務的経費(法定給付費と高齢者医療への拠出金)に占める割合は19年度の45.4%から、22年度に49.6%、25年度には50.5%に達すると見込まれる。

■ 2022年、2025年に向けて医療・介護分野において必要な制度改革

こうしたなか、22年に向けて、全世代で支えあう医療保険制度への改革を早急に進めるべく、政府における「骨太方針2020」の取りまとめを視野に、健保連では9月に提言を公表した。そのなかでは、喫緊の課題のうち特に最重点項目として3点を強調している。

第1に、後期高齢者の自己負担の段階的な引き上げ。まずは75歳に到達する者から自己負担割合を順次2割とすべきだとしている。第2に後期高齢者の現役並み所得者の給付費への公費5割の投入を掲げている。特に、現在の政府の「改革工程表」において、後期高齢者医療制度の現役並み所得者の基準見直しが盛り込まれているなか、仮に見直しを行う場合は現役世代の保険料負担が増えないようにすべきである。第3に、薬剤費が総額で伸びるなか、市販品類似薬の保険給付範囲からの除外や償還率の見直しについて、レセプトデータの分析結果などに基づいて課題提起を行っている。

高齢者の負担増となる改革項目もあるが、健保連で行った国民意識調査の結果からは、70代の高齢者でも「増え続ける高齢者の医療費を賄うためには、高齢者自身の負担を引き上げるべきだ」と考える人が少なくない。見直しについて理解が得られるよう、必要性を丁寧に説明し、制度改革の実現に向けて、引き続き取り組んでいくことが重要である。

【経済政策本部】