Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月1日 No.3437  お茶の水女子大学の室伏学長と懇談 -理工系女性研究者の活躍の現状等について聞く

説明する室伏学長

経団連は12月9日、東京・大手町の経団連会館で、お茶の水女子大学の室伏きみ子学長から、理工系女性研究者の活躍の現状や研究・開発分野における女性活躍の必要性等について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 理工系女性研究者の活躍の現状と課題

日本では、女性研究者が他の先進国と比べてはるかに少なく、特に理工系分野では、女性教員の割合が10%未満と大幅に不足している。そこで政府は、2020年までに、全研究者に占める女性研究者の割合を30%とする目標を掲げて女性活躍の推進に取り組んでいるが、現在の緩やかなペースのまま増加した場合、30%に到達するのは2060年であり、目標までの道のりは遠い。また、大学内の職位が上がるほど女性教員の比率の低下がみられ、組織の意思決定に携わる女性教員は少ない。女性研究者を先進諸国と同水準まで引き上げるためには、初等中等教育段階から女子が研究へのモチベーションを持てるような環境をつくるとともに、教授職以上の、組織の意思決定に関わる立場の女性を増やす工夫をしなければいけない。

理工系に関していえば、女性研究者の拡大を阻む原因として、(1)周囲の家族や初等中等教育段階の教員の考えのなかに潜む旧来の役割意識によって、女性自身、「女子は理工系に向かない」というアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)を持ってしまっていること(2)多くの大学で、女性が理工系分野で研究者として成長するための指導体制が構築されていないこと(3)大学院に進学する女子学生に比べて女性教員の数が少ないため、身近なロールモデルが不足していること(4)博士課程進学後の就職への不安から、修士課程で就職する女子学生が多いこと(5)研究が最も進む時期に起こる結婚、出産、育児等の多様なライフイベントによって研究が中断されること――が挙げられる。

本学では、学内保育所の設置や育児等により研究を中断した女性研究者の復帰支援のための「みがかずば研究員」制度を実施しており、学生や研究者が安心して研究を行える体制を構築している。その結果、理工系の女性教員の割合が38%、大学の意思決定に関わる立場の女性の割合が44.4%と全国的に極めて高い水準を誇っている。

■ 研究・開発分野における女性活躍の必要性

三菱総合研究所の調査・分析から、男女の発明者が関わっている特許は、男性のみが発明者の特許と比べて経済価値が高く、かつ、特許数に占める女性が関わる特許の割合が高いほど経済価値が高くなるとの結果が得られている。これは、女性ならではの新たな視点が入ったことで経済価値が高まったためと考えられる。最近、工業製品の研究・開発や医療・介護等において女性視点の必要性が指摘され、性差に基づく製品等の改良や新たな検査法・治療法が開発され始めている。本学でも工学分野の女性研究者・技術者の拡大やジェンダーに配慮したイノベーションの促進、新市場の創出に取り組んでおり、産業界の皆さまにも活動に協力いただけるとありがたい。

【SDGs本部】