Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月9日 No.3438  「ダイバーシティマネジメント for SDGs ~投資家の視点もふまえて」 -ダイバーシティ・マネジメントセミナーを開催

経団連は12月16日、東京・大手町の経団連会館で、内閣府との共催により「ダイバーシティマネジメント for SDGs ~投資家の視点もふまえて」をテーマに「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。2013年度から開始した同セミナーは今年度で7年目を迎え、企業の役員・管理職やダイバーシティ推進の担当者など約200名が参加した。概要は次のとおり。

■ 基調講演「ダイバーシティ先進企業へのチャレンジ」
日比野隆司経団連審議員会副議長・大和証券グループ本社会長

講演する日比野審議員会副議長

大和証券グループでは、企業理念に「人材の重視」を掲げ、さまざまな働き方改革を進めてきた。社員の生産性、活躍度、働きがいを定量的に把握し、すべての社員が高いモチベーションのもとで結束し、社員一人ひとりが自立的に活躍し続けられる環境の整備に努めている。とりわけ、女性の活躍については、2005年に「女性活躍推進チーム」を発足させ、早い時期から強力に推進している。最近では、女性のキャリア形成も含めた包括的な支援を行う「Daiwa ELLE Plan」の導入や、役員に占める女性割合の向上を目指す「30% Club Japan」(別掲記事参照)への参画等に取り組んでいる。

これからの人材マネジメントにおいては、急激な時代の変化に対応したイノベーションが不可欠である。経団連が推進しているSociety 5.0の社会では、想像力・創造力を備えた多様な人材が活躍できる柔軟な人事制度・組織対応が必要となる。企業側が求める人材像を明確に打ち出し、自らの人事制度を変革することが日本の未来を変えることになるのではないか。

■ 事例紹介「ESGの観点から見たダイバーシティ推進」
キャシー・松井ゴールドマン・サックス証券副会長

経済成長を促す要因は、資本・人材・生産性の3つである。近年の人口減少に対しては、(1)出生率の引き上げ(2)外国人労働者の受け入れ拡大(3)労働力率の引き上げ――という対応策が考えられるが、このうち労働力率の引き上げについては、日本の男女の就業率および労働時間の格差が改善すれば、日本のGDPを15%増加させるとのデータもある。

ウーマノミクスには3つの誤解がある。第一に、女性が仕事を辞める理由は育児や介護などの「プル」要因(仕事以外の要因)といわれることが多いが、実際は仕事への不満・行き詰まり感といった「プッシュ」要因(仕事に関連する要因)によるところが大きいという点である。第二に、ダイバーシティは企業のパフォーマンスと無関係であるといまだにいわれるが、女性活躍が進んでいる企業ほど株価やROE(自己資本利益率)が高いという点である。第三に、女性の就業率が向上すれば出生率が下がるといわれているが、諸外国のみならず日本の都道府県別のデータを見ても、女性就業率と出生率の間には正の相関があるという点である。ウーマノミクスに関する通説はさまざまあるが、われわれは何が事実なのかを理解したうえで議論する必要がある。

■ 事例紹介「コマツにおけるグローバル化とダイバーシティ推進」
浦野邦子コマツ取締役常務執行役員

コマツでは、中期経営計画の成長戦略による収益の向上とESG(環境・社会・ガバナンス)課題解決を好循環させることで企業の持続的成長を目指している。そのためにダイバーシティの推進とグローバル化の一層の強化が必要と考え、経営の現地化をさらに進め、研修等を通じて後継者の育成を図っている。

製造業では近年、製品(ハード)からサービス・ソリューション(ソフト)へとビジネスが大きく変化してきており、変化に強い会社への変革のために、課題を見つけ出す力やバイアスなく見る力を備えた多様な視点と経験を備えた人材(男性・女性、外国籍社員、経験者採用者等)が必要である。また、女性を活かせる環境とは、すなわち誰もが働きやすい環境と考え、女性だけの制度から全従業員を対象とした制度への普遍化を進めている。女性の活躍推進については、明確なトップ方針のもと、採用・育成配置・働きやすい環境・意識の向上の各分野で継続して施策を進めており、今年度はグローバル女性リーダー層の育成のための社内プログラムをスタートし、グループで育成の充実を図っている。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】