Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月30日 No.3440  連合との懇談会を開催 -今年の春季労使交渉における諸問題について意見を交換

経団連(中西宏明会長)は1月28日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、神津里季生会長)との懇談会を開催し、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題について意見交換を行った。

中西経団連会長

神津連合会長

冒頭のあいさつで中西会長はまず、「グローバル化やデジタル化によって経済・社会が大きく変化していくなかで、企業が、働き手が十分に力を発揮できる環境を整え、エンゲージメントを高めていかなければ日本経済が活性化しない」と指摘。そのうえで、長期・終身雇用や年功型賃金などを特徴とする日本型雇用システムについて、労使で課題を共有して議論を重ねていくことが必要だと語った。賃金引き上げについては、モメンタムを維持することの重要性を強調するとともに、その実現に向けて各企業が実情に応じて検討していくとの基本スタンスを示した。

一方、連合の神津会長は、「少子高齢化や人口減少、賃金の状況など、この20年間で膨れ上がった問題について、社会全体がもっと危機感を持つ必要がある」と指摘したうえで、「2020春季生活闘争では、分配構造の転換につながり得る賃上げを目指していく」との決意を表明した。

続いて、連合側が「2020春季生活闘争方針」、経団連側が「2020年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」について説明した後、意見交換を行った。

そのなかで、日本型雇用システムについて、経団連側は、若者の失業率が国際的に低いなどのメリットがある一方で、多様な人材の活躍推進などにおいて、これまでの仕組みだけでは対応できない課題も生じており、自社にとって最適な雇用システムへと再構築していく必要があるとの見解を示した。

これに関して連合側からは、日本型雇用システムは日本企業に根ざしており、働き手の安心安定の担保にもつながっているとの発言があった。また、連合側から、消費増税分の取引価格への転嫁や取引先に配慮した発注など、サプライチェーン全体で付加価値を高め、その適正な分配を求める意見があった。これに対して経団連側からは、サプライチェーン全体での取り組みが必要との認識は一致しているとしたうえで、経営層と現場との意識共有を図ることが重要との考えを述べた。

連合側からの「人を中心とした経営が重要」との発言に対して、経団連側からは、「社員の力や可能性を引き出したうえで伸ばして活かすことがエンゲージメントの本質」であり、「人を中心とした新しい労使関係が大事」との見解が示された。

会合の最後にあいさつした連合の神津会長は、「基本的な問題意識は労使で共通している。立場の違いから、重点の置き方、表現が異なるが、引き続き深掘りをしていきたい」と述べ、本質的な議論を行っていきたいと語った。

中西会長は、働き手が活躍しやすい環境をつくっていくことの重要性をあらためて強調するとともに、地方創生や中小企業の活性化、女性の活躍推進など、さまざまな課題の解決に向けて、労使で力を合わせて取り組んでいきたいと締めくくった。

【労働政策本部】