Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月30日 No.3440  阪神・淡路大震災から25年を迎えて -震災25年事業で考える「被災地支援の歩みと市民団体や企業の連携・協働のあり方」

東遊園地(神戸市中央区)での追悼行事「1.17のつどい」

2020年1月17日午前5時46分、神戸市中央区の東遊園地では、竹灯籠を並べてつくった文字「きざむ1.17」の灯りを囲み、参列者は静かに黙とうした。1月17日は、震災の記憶、犠牲になられた方々との思い出、生きていることや人とのつながりへの感謝、次代に伝えるべき教訓を、あらためて心に刻む日でもある。

大阪ボランティア協会が主催した阪神・淡路大震災25年事業では、これまでの被災地支援の歩みを振り返るとともに、今後の大規模災害に向けて、市民団体や企業はどのような連携・協働を目指すのか、未来予測を含めて考える機会を持った。

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25年前の震災翌日、豊田章一郎経団連会長(当時)は、担当者に対して「多くのボランティアが被災地を訪れる。経団連1%クラブはボランティア活動支援に特化するように」との指示を出した。そこで、1%クラブは、日ごろからつきあいのあった大阪ボランティア協会などの市民団体と一緒に、日本で最初の協働型災害ボランティアセンター「阪神・淡路大震災被災地の人々を応援する市民の会」を立ち上げ、その運営を支援することとした。1%クラブから企業に対して、ボランティア活動や地元NPOの立ち上げを支える「支援金」の拠出、拠点整備のための備品や救援物資の提供をお願いするとともに、企業人向けのボランティアプログラムを実施した。ボランティア元年といわれる阪神・淡路大震災は、企業とNPOのパートナーシップ元年ともなり、企業が体系的な災害被災地支援活動に取り組むきっかけにもなった。

東日本大震災を経て、企業による被災地支援活動は各社の専門性を活かして多様化した。支援期間は緊急救援期だけでなく復興期へと延長されるようになり、社員や消費者を巻き込んだ支援の輪が広がり、NPOとの協働も進んできた。また、各地方自治体では地域防災計画に基づく災害ボランティアセンターの設置が進み、災害支援を目的とするNPOが多数台頭し、全国組織による調整や国・自治体との対話が活発化するなど、災害被災地支援に関するネットワークは充実してきた。

しかしながら、高齢化率が上昇し若者が減少するなか、地域住民の災害時対応力は減退している。これまでは自治会、消防団、自主防災組織など地縁組織による「共助」が地域防災の中心となっていたが、これからは企業やNPOによる専門性の高い支援を広域に展開することなしに地域は支えられなくなっている。

災害時に顕著化する社会的課題に対応するためには、多様な担い手が協働する「マルチステークホルダー・エンゲージメント」が重要である。SDGs(国連の持続可能な開発目標)を共通言語として、発生し得る問題を想定し、日常から対話を進めて各組織の強み、資源、限界についても理解して準備しておくことが望ましい。大規模災害が多発するなか、人類が英知を結集し、住み続けられるまちづくりに向けて歩みをさらに進めることを、失われた命に誓う一日となった。

【SDGs本部】