Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月6日 No.3441  「職場のハラスメント防止セミナー」を開催 -働き方改革リレーセミナー

経団連は1月22日および27日、東京・大手町の経団連会館で「職場のハラスメント防止セミナー」を開催し、企業の人事担当者を中心に、両日あわせて約400名が参加した。同セミナーは、事業主に対して職場のパワーハラスメント防止措置を義務づけた改正労働施策総合推進法が6月1日に施行されるにあたり、働き方改革リレーセミナーの一環として開催したもの。

前半は、厚生労働省雇用環境・均等局の森實久美子雇用機会均等課長が、改正法および1月15日に公布された職場におけるパワーハラスメント防止指針等の内容について、事前に参加者から寄せられた質問への回答を織り交ぜつつ解説した。

後半は、中町誠法律事務所の中井智子弁護士が、「職場のハラスメント防止に向けて~裁判例を中心に」と題する講演を行った。中井氏は、パワーハラスメントの定義や言動の類型などを説明したうえで、ハラスメントが否定された裁判例や地裁・高裁で判断が異なった裁判例、適切な指導かパワハラかが問われた裁判例を紹介し、企業が留意すべき点を解説した。中井氏の説明の概要は次のとおり。

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数年来、パワーハラスメント相談件数が急増している。パワーハラスメント防止の法制化は働き方改革の一環である。パワーハラスメントについて、法の定義では「労働者の就業環境が害される」か否かが要素の一つとなっているが、司法上のパワーハラスメントの判断基準においては、権利の侵害の有無、精神的・身体的苦痛を与えたかに重きが置かれており、企業の実務対応上は、概念を広げた視点を持つことも必要。

ハラスメントは、職種・業態を問わず発生する日常の労務問題であること、職場の士気低下や人材流出のみならず、損害賠償、風評リスク等、企業にとっては大きなダメージにつながる要因となることから、企業の実効性ある対応が必要となる。しかしながら、ハラスメントととられるのではないかということを恐れるあまり、管理職が業務指示を委縮するようでは本末転倒である。企業の対応策としては、(1)早期発見・早期対応(2)安心できる相談体制の確立(3)相談に対する対応において、問題が生じた際、言動に至った経緯、背景にある人間関係等の丁寧な問題把握に留意すること(4)メンタルヘルス対応策との連動(5)迅速な事後措置――を行うことが重要である。過去の価値判断にとどまらず、新しい考え方に柔軟な姿勢で、効果的な教育を継続し、日ごろから職場のコミュニケーション活性化を図ることが大切である。

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講演後の質疑では、企業現場での対応の難しさをうかがわせる質問が寄せられ、中井氏から具体的事案に対する対処方法についてアドバイス等があった。

【労働法制本部】