Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月13日 No.3442  「企業におけるがん対策の重要性」 -常任幹事会で中川東京大学准教授が講演

講演する中川氏

経団連は2月5日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、東京大学の中川恵一准教授から、「企業におけるがん対策の重要性」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

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わが国は、男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになる「がん大国」である。高齢化によって定年が延長され就労人口の高齢者割合が増えたことや、男性に比べて若いころからがんのリスクがある女性の社会進出が進んだことから、従業員ががんを患う可能性は今後ますます高まっていくだろう。しかし、受動喫煙対策や放射線治療の導入状況、モルヒネ等の医療用麻薬の使用状況などからみて、わが国はがん対策では「後進国」であるといわざるを得ない。

「がん社会」の到来に備え、企業としては、がんに対する知識を深め意識を高める啓発活動と、働きながらがん治療を行う環境整備の推進が求められる。

がんは正しい知識で予防でき、適切な定期検診による早期発見と治療により95%が治せる病気だ。しかし、わが国のヘルスリテラシーは、先進国はおろかアジアの新興国よりも遅れているという調査結果もあるとおり、がんに対する誤った知識や思い込みが蔓延しているため、より適切ながん対策の障害となっている。

例えば、わが国ではがん治療の方法として、本来は本人の負担も少ない放射線治療がなかなか選ばれず、圧倒的に手術による治療が多い。これは「がんは手術によらなければ根絶できない」という先入観が強いことが理由の一つと考えられている。ようやく中学・高校の新しい学習指導要領に「がん教育」が明記され、今後は「大人のがん教育」が課題となる。その大きな担い手として、企業が主導して行うことが不可欠であろう。がん検診の受診率を上げるとともにがんに関する正しい知識を伝える取り組みを推進する「がん対策推進企業アクション」推進パートナー企業は、現在約3200社に上る。

これを機会にぜひ自社の取り組みを確認し、がんと前向きに取り組む社会機運の醸成に協力してほしい。

【総務本部】