Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月20日 No.3443  経産省の若月環境政策課長から今後の気候変動政策について聞く -環境安全委員会地球環境部会

経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会地球環境部会(右田彰雄部会長)を開催し、経済産業省の若月一泰環境政策課長から、COP25(国連気候変動枠組み条約締約国会議)後の気候変動政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 革新的環境イノベーション戦略

革新的環境イノベーション戦略は、世界のカーボンニュートラル、さらにはビヨンドゼロを可能とする革新的技術を2050年までに確立することを目指し、長期戦略に掲げた目標に向けて社会実装を目指していくものである。

16の技術課題について具体的なコスト目標を示す「イノベーション・アクションプラン」、こうしたコスト目標の実現に向けた研究体制や投資促進策を示した「アクセラレーションプラン」、開発した技術の社会実装にあたり、グローバルリーダーとともに社会に発信していくことを目指す「ゼロエミッション・イニシアティブズ」の3階層で構成されている。

「アクセラレーションプラン」では、戦略を実行する司令塔として府省横断のグリーンイノベーション戦略推進会議を立ち上げる。また産業技術総合研究所に設置したゼロエミッション国際共同研究センター(センター長=吉野彰氏)に国内外の叡智を結集し、各種のプロジェクトを具体化していく。こうしたプロジェクトへの民間投資を呼び込むにあたっては、ゼロエミ・チャレンジとして、優良プロジェクトの表彰や情報開示を行う。経団連の「チャレンジ・ゼロ」(2019年12月12日号既報)と密接に連携し、企業のイノベーションを後押ししていきたい。

「ゼロエミッション・イニシアティブズ」では、グリーンイノベーション・サミットをはじめとする各種の国際会議を開催し、脱炭素社会に向けたイノベーションの取り組みを世界とともに発信していく。

■ EUサステナブルファイナンスをめぐる動向

SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定の締結を契機に、EUにおいて持続可能な発展を金融面で誘導する動き(サステナブルファイナンス)が進展している。その一環として、サステナブルな活動を分類・定義し、分類に応じたラベリングにより投資の促進を促すことを目的に、タクソノミーが作成されている。

現在、EU内部において技術的な検討が行われているが、EUタクソノミーには、脱炭素社会への移行期における技術・製品が十分に組み込まれていない等、課題がある。今後、経産省において金融界を交えた研究会を立ち上げ、EUの動きを踏まえつつ、日本としての考え方を議論していきたい。

■ COP25について

市場メカニズムの実施指針に関する交渉が頓挫するなか、近年のCOPは「目標をどうするのか」というイベントのようなものに変容している。日本としては、イノベーションによって気候変動問題の解決に向けた責任ある道筋を示していく必要がある。経団連と協力しながら、日本の技術・コンセプトを世界に発信していきたい。

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経団連では、こうした政府の施策と連携しつつ、チャレンジ・ゼロを通じて、企業等による脱炭素社実現に向けたイノベーションの挑戦を後押しすることとしている。

【環境エネルギー本部】