Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月27日 No.3444  川村駐カナダ大使との懇談会を開催 -カナダ委員会

説明する川村大使

経団連のカナダ委員会(佐藤洋二委員長、植木義晴委員長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で川村泰久カナダ駐箚特命全権大使から、日本とカナダの経済関係の現状と今後の展望などについて説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 二期目に突入したトルドー政権

昨年11月に総選挙が行われ、与党・自由党が勝利を収めたものの、議席の過半数を獲得するには至らなかったため、少数与党として政権を運営することとなったが、トルドー首相に対する国民の期待は引き続き高い。

各種経済指標を見ると、2018年の実質GDP成長率1.9%に対し、政府は19年1.7%とほぼ同水準の成長を見込むなど、順調に推移していることがわかる。失業率は低下し、雇用は拡大したが、これらの成果は移民政策によるところが大きい。移民による人口増加がカナダの景気を支えており、これが経済活力の源泉となっている。

一方で課題もある。パイプライン建設工事の遅延もあり、エネルギー価格が低迷するなか、エネルギー開発はトルドー政権が取り組むべき主要課題となっている。背景には環境・エネルギー政策における連邦政府と州政府の立場の相違があり、解決には時間を要するのが実情だ。今般、トルドー首相はフリーランド前外相を副首相に任命し、州政府との間の調整を一任した。外相時代の交渉手腕に定評がある同副首相が、この問題にいかに向き合い取り組んでいくか注視していきたい。

■ 太平洋国家としてのカナダ

カナダの国旗を見ると、中心にメイプルリーフ(カエデの葉)があり、その左右に等間隔の赤い帯が描かれているのがわかる。この赤い帯は、大西洋(右)と太平洋(左)を表しており、「カナダは大西洋国家であるとともに、太平洋国家でもある」ことを意味している。カナダは、経済的な米国依存を是正すべく、インド太平洋地域の国々との関係強化を模索している。しかし、昨年のファーウェイ副会長の拘束などを契機に、中国との関係が悪化しているいま、多くの価値観を共有し、カナダ国民の間で信頼できるパートナーとして認識が高い日本に対して、大きな期待が寄せられている。

■ 独自の強みを持つ新産業分野

世界有数の資源国であるカナダは、エネルギー・鉱物資源の採掘などが盛んだが、一方で人工知能(AI)分野など最先端の産業においても強みを持っている。生活コスト、就労ビザなどの就業条件や良好な治安などにおいて優位性のあるカナダには、トップ研究者、大学、研究機関、投資家、スタートアップ企業などが有機的に連携する「AIエコシステム」が複数存在しており、世界中から注目されている。

カナダ人は、対人的信頼関係や社会的調和を重要視するなど、日本人と似た価値観や考え方を有している。このようなカナダ人の精神性は、ビジネスにおける環境の良好さにつながり得るため、両国がより多くの分野で協力していけることを願っている。

すでに進出している企業からは、カナダの市場の成長性や潜在力の高さを評価し、事業を拡大したいとの声も多数聞かれる。

約30年前、初めてカナダ人と交渉した。交渉ではいろいろやりとりがあったが、最後にメープルシロップの入った小袋を渡された。意見が対立しても、最後は笑顔で握手。遠来の客にメープルシロップを手渡すカナダ流の「おもてなし」外交にも親しみが持てる。日加経済関係がさらに強固なものになることを期待している。

【国際経済本部】