Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月27日 No.3444  オンライン診療・服薬指導について聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会・イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

経団連は1月29日、都内で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)とイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会の合同会合を開催。MICIN社の原聖吾CEOから「オンライン診療・服薬指導の現状と規制改革がもたらす医療の未来」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ オンライン診療の現状と課題

オンライン診療とは、患者が自宅や会社にいながらインターネットを介して医師とつながり、ビデオ通話等で診察を受けられる仕組みを指す。

  1. 患者がスマートフォンのアプリケーションで受診を予約するとともに問診票に回答する
  2. 医師がビデオ通話で患者を診療する
  3. 患者がスマートフォンで料金を支払う

――というイメージである。医療機関への訪問に要する負担の軽減や通院に伴い発生する生活上・ビジネス上の機会損失の削減、物理的な距離を超えた専門医へのアクセスの向上、医師の柔軟な働き方の実現など、国民・企業・医療関係者のそれぞれにメリットをもたらす。

2015年の厚生労働省事務連絡を皮切りに、政府はオンライン診療に関する制度整備を進め、18年の診療報酬改定では「オンライン診療料」が新設された。しかしながら、保険診療においては、

  1. 対象疾患が限定されている
  2. 対面診療に比べ算定できる点数が低い
  3. 緊急時に概ね30分以内に対面診療が可能な体制の構築が必要とされる

――等の制約が存在する。自由診療の場合も同様に、初診時は対面診療を原則とすることなどが求められる。結果的に、保険診療と自由診療の双方でオンライン診療の普及はあまり進んでいない。

■ オンライン服薬指導の現状と課題

オンライン服薬指導とは、薬剤師がビデオ通話を用いて患者に薬の服用方法や効能、保管方法を説明することを指す。オンライン診療の解禁が進む一方、受診後の患者は薬局に処方箋を持参し、薬剤師の対面で服薬指導を受けることを求められてきた。このため、診療から服薬指導に至る一連のプロセスがオンラインで完結せず、患者負担の軽減は限定的であった。

そこで、19年秋の臨時国会で改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が成立し、改正省令の公布日から1年以内にオンライン服薬指導が解禁される見通しとなった。しかしながら、オンライン服薬指導への対応が容易でない薬局も存在し、利害関係者を含む詳細な制度整備に際して一定の制約が課せられる可能性が高い。

■ MICINの取り組み

オンライン診療の普及に向けた当社の取り組みを2点紹介する。

1点目はオンライン診療サービス「クロン」の提供である。患者は、予約から問診・受診、診察代金の支払いをスマートフォンで完結でき、都市部を中心に全国1700ほどの医療機関が導入している。クロンは診療所での活用が中心だが、それ以外にも医療機関や患者のニーズを踏まえた多様なユースケースを模索しており、

  1. 薬剤師による患者の服薬状況のフォローアップ
  2. 在宅医療・介護における患者・家族と医師・看護師とのコミュニケーションツールとの併用
  3. 大学病院における指定難病患者の診察

――などへの活用を進めている。

2点目は規制改革の推進である。例えばインフルエンザの検査について、「規制のサンドボックス制度」に基づき、

  1. 患者が薬局でインフルエンザの迅速診断キットを受け取る
  2. ビデオ通話で接続された医師が指導して患者が同キットで自己検査を実施する
  3. 検査結果を医師が確認して受診勧奨を行う

――といった実証実験を実施した。こうして取得した患者の受診行動等のデータやエビデンスを用いることで、昨今の新型コロナウイルス感染症のような新興感染症の対策にも応用できると考えている。

◇◇◇

テクノロジーやデータの活用は、患者一人ひとりに最適な健康・医療サービスの提供に貢献する。当社のビジョンである「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を」に向けて今後も取り組んでいきたい。

【産業政策本部、産業技術本部】