Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月27日 No.3444  IPO監査引き受けをめぐる課題について聞く -スタートアップ政策タスクフォース

経団連は2月5日、東京・大手町の経団連会館でスタートアップ委員会スタートアップ政策タスクフォース(出雲充座長)の第6回会合を開催し、金融庁の野崎彰企画市場局企業開示課開示業務室長から、株式新規上場(IPO)にかかる監査引き受けをめぐる課題や対策の方向性について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 監査法人とスタートアップの双方に課題

近年、スタートアップが盛り上がりを見せ、IPOを目指している企業も多いが、IPO監査を引き受ける監査法人探しに苦慮しているところが多い。

そこで金融庁では、昨年12月に「IPOに係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」を設置。公認会計士協会、大手・準大手監査法人、日本ベンチャーキャピタル協会、ベンチャー企業、証券会社などをメンバーとして議論している。

課題を2つに整理した。1つ目の課題は監査法人のキャパシティー不足である。この背景には、IPO直後の不正会計問題が頻発して監査が厳格化したこと、そして、働き方改革が進み、残業でカバーすることが難しくなったことなどがある。その結果、監査法人のリソースが新規案件ではなく上場済み案件に割かれているとの実態がある。さらに上場を引き受ける証券会社側が、大手などの実績ある監査法人による監査を事実上求めていることも、キャパシティー不足の問題につながっているようだ。

もう1つの課題はIPOを目指すスタートアップ側の準備不足である。IPOを目指すに足る水準まで内部管理体制が構築できていない企業もある。また、ベンチャーキャピタル(VC)などの支援がないと、そもそも監査法人に会うこと自体が難しいという問題もある。

スタートアップからは「監査法人探しに半年から1年がかかる」「大手との監査契約のハードルが非常に高い」といった声があり、他方、VCからは「監査法人に持ち込むタイミングが早すぎる」、証券会社からは「監査の品質を重視するとどうしても大手寄りになる」との意見がある。

IPO監査を引き受けられる事務所は大手・準大手に限らず全部で130ほどある。そうした事務所とスタートアップをつなげる方策の検討などを行い、3月には対応案を取りまとめる予定である。

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説明を受けてタスクフォース委員等から、「監査法人に相談を持ち込む前に最低限クリアすべき項目を盛り込んだガイドラインを示してはどうか」「監査法人に負荷がかかりすぎておりリターンに見合わない。報酬体系を含めた見直しをしてはどうか」「IPO監査を受けられる中小規模事務所をもっと周知すべきだ」「VCにはIPOにかかるノウハウが蓄積している。VCこそが自身の投資先のスタートアップをより支援すべきだ」などの意見があった。

【産業技術本部】