Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年3月12日 No.3446  これからの「ダイバーシティ&インクルージョン」を考える -「第18回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催/泉谷副議長が講演

経団連は2月20日、会員企業各社の女性役員のさらなる活躍を応援する「経団連女性エグゼクティブ・ネットワーク」の活動の一環として、泉谷直木審議員会副議長(アサヒグループホールディングス会長)をメンターに迎え、東京・大手町の経団連会館で「第18回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催した。42名の女性役員が出席し、講演を聞くとともに意見交換を行った。講演の要旨は次のとおり。

■ 日本の女性活躍推進に関する問題意識

日本では男女雇用機会均等法の施行から30年以上が経過し、各社とも女性活躍推進の取り組みを行ってはいるものの、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数のランキングは低位にとどまっている。このような現状に対し5つの問題意識を持っている。

まず1つ目に、そもそも経営者は「女性活躍推進」を本気で経営上の重点課題と考えているのか。女性の消費性向が男性に比べはるかに高いことに鑑みると、女性消費を組み込んだ経営戦略は不可欠であり、それを実行するための組織や機能をつくるためには女性リーダーが必要である。これは、組織内だけの取り組みでなく、大きな枠組みで考えるべき問題である。

2つ目に、「ダイバーシティは異質の融合」と言いつつ「インクルージョンで同質化」させていないか。男性経営陣のロジックを女性の感性で埋めるのではなく、むしろ女性に任せ、女性の個性や特性を引き出し、経営に取り込む必要がある。

3つ目に、「ロールモデルがいない」ことが経営陣や女性社員の言い訳になっていないか。若手社員が憧れるような“おしゃれでかっこいい”女性役員のロールモデルを経営者がつくり出す必要がある。あわせて、ロールモデルとなる女性役員が次世代を担う後継者を育成することも重要だ。

4つ目に、「ダイバーシティ&インクルージョン」が高いマネジメント能力で展開されているか。本来の「ダイバーシティ&インクルージョン」は、異なる属性であっても協働関係がなければ成果は上がらない。女性に一律に同じことを求めるのではなく、それぞれの活躍に応じたマネジメントが必要である。

5つ目に、経営陣は「ダイバーシティ&インクルージョン」が業績向上につながると考えていないのではないか。女性活躍がさらに進展すれば、確実にイノベーションが起きるということを、経営陣がもっと考えるべきであろう。

■ 女性役員への期待と自分の信念

女性役員の皆さんは、男性と比較するのではなく、男性との違いを重視し能力を発揮してほしい。熱意ややる気において男女差はない。「男の癖、女の癖」の俗説に惑わされず、女性ならではの「ファッション・ミッション・パッション」を組み合わせた「独自のスタイル」を貫いてほしい。

「信念・気概・矜持」が自らを成長させる。経営とは、自分の人格をかけた戦いであり、自らのスタイルの集積の上に成り立つものではないか。

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講演後、日本におけるジョブ型雇用やダイバーシティ経営に直結する人事制度のあり方等について活発な意見交換が行われ、泉谷副議長から多岐にわたるアドバイスが送られた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】