Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年3月19日 No.3447  上場子会社などのガバナンスをめぐる課題への対応などについて聞く -金融・資本市場委員会資本市場部会

経団連は2月26日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会資本市場部会(松山彰宏部会長)を開催し、東京証券取引所(東証)の林謙太郎上場部長から、親子上場をはじめとする支配株主を有する上場会社などをめぐる課題への対応や東証の新たな市場区分について、説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 独立性の判断基準の強化

上場子会社などのガバナンスをめぐる問題は古くて新しい問題であり、東証では、2006年に「親会社等からの独立性確保に関する考え方・施策等」の開示を求めるなどの取り組みを行っている。直近では、政府の「成長戦略実行計画」(19年6月)を受け、上場子会社における社外役員の独立性の判断基準を強化するなどの対応を行った。

これまで、親会社・兄弟会社の業務執行者などであった者については、親会社・兄弟会社に属していた時期が「最近(1年以内が目安)」でなければ独立性があるとみなされていた。これを「過去10年以内」に属していた場合は独立性がないと判断するよう、基準を見直した。

コーポレート・ガバナンスに関する報告書の開示充実も行った。例えば、上場子会社を有する上場会社(親会社)に対し、上場子会社を有する意義や上場子会社のガバナンス体制の実効性確保策などを必須開示項目とした。要請項目としては、グループ経営の考え方や方針に関する上場子会社との契約内容を開示することを求める。新基準は、今年3月31日以後に終了する直近事業年度にかかる定時株主総会の翌日から適用される。

■ 従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会

市場における上場子会社の割合が低下傾向にあるなか、親会社に準ずる「支配的な株主を有する上場会社(従属上場会社)」が増えている。そこで、従属上場会社をめぐる最近の事例が示唆する点を検討するため、1月に「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」を設置した。

これまでの議論では、従属上場会社について、一律に排除すべきなどの意見はない。ただし、企業側からは、従属上場会社の利点を評価する意見がある一方、機関投資家からは株価パフォーマンスが低いことなどから、その意義を疑問視する意見があった。また、支配的な株主と従属上場会社の少数株主との間に構造的な利益相反が存在することは共通認識とされるものの、少数株主保護のためのルール整備のあり方については、さまざまな意見がある。

今後、幅広く課題を抽出し、解決策を検討していく。

■ 新市場区分への移行

昨年末の金融審議会市場構造専門グループにおける取りまとめを踏まえ、東証は市場区分の見直し案の概要を2月21日に公表した。市場構造専門グループの取りまとめと同様、明確なコンセプトに基づき、市場区分をプライム、スタンダード、グロースの3つの市場(いずれも仮称)に再編する。

このうち、現行の市場第一部上場企業の多くが選択するとみられるのがプライム市場である。多くの機関投資家の投資対象となるよう、上場基準として、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上を求める。適用されるコーポレートガバナンス・コードについては、他の市場区分よりも高い水準が設定される見通しである。

また、企業価値評価が高いものの、先行投資で赤字を続けるスタートアップの上場も念頭に、時価総額1000億円以上かつ売上高100億円以上の場合には、赤字であってもプライム市場への上場の対象とする。

今後、年内に新制度要綱の公表と意見募集手続きを行う。各上場企業は、新市場区分の基準の詳細と、来年予定されるコーポレートガバナンス・コードの改訂の内容を踏まえ、主体的に市場区分を選択する。22年4月の新市場区分への一斉移行を目指し、今後準備を進めていく。

【経済基盤本部】