Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年4月9日 No.3450  提言「スタートアップと大企業による協創を促進する契約実務の普及に向けて」を公表

経団連は4月2日、提言「スタートアップと大企業による協創を促進する契約実務の普及に向けて」を公表した。

近年、わが国の大企業の間では、スタートアップとの連携によるオープンイノベーション(協創)に向けた取り組みが活発化しているが、連携に際して、契約に関するトラブルが頻発している。このため、経済産業省は、大企業とスタートアップの契約に関する「手引き」および「モデル契約書」(同手引等)の作成を進めている。そこで、経団連の考え方を取りまとめ、同手引等への反映を図ることとした。提言のポイントは次のとおり。

■ 総論

大企業とスタートアップでは、法務・知財にかかるリソースが圧倒的に異なるということを前提としたうえで、同手引等を作成することを期待する。

■ 秘密保持契約(NDA)

NDAについては、締結後に情報交換が可能となることから、短期間での締結を目指すべきである。また、「連携の具体的内容」や将来的に発生し得る「知財の帰属」等についてはNDAではなく、技術実証(PoC)以降の契約で取り扱うべきである。

■ 技術実証(PoC)契約

PoCでは、スタートアップは自らのリソースを割いて試作品の開発等に取り組むことになる。リソースの限られるスタートアップが無期限の開発を強いられる事態を避けるため、PoCの「目標(成果)」に関する明確な定義を例示すべきである。

■ 共同開発(研究)契約・システム開発契約

PoCが成功した場合、共同開発(研究)契約・システム開発契約へと進む。知財の帰属やライセンス条件が争点となりやすいため、「開発(研究)終了後の権利状況やビジネスを念頭に置きながら交渉すべき」といった記載を盛り込むべきである。さらに、スタートアップ向けには、「自社のビジネスの支障とならないよう大企業側の出願戦略等にも注意を払いながら知財の取得方法や内容を検討すべき」との記載を求める。

■ AI分野特有の課題への対応

AIにかかるモデルが有意義な効果を生むかどうかは開発着手前にはわからないことが多い。このため、NDA、PoC、システム開発に関するモデル契約には、「性能(精度)の正確性については保証しない」旨の条項を盛り込むべきである。

■ 関係者に求める行動

政府に対しては、特許庁等に常設のスタートアップ向け法務・知財相談窓口を設置することを望む。スタートアップには、同手引等の運用にあたり、法務・知財に関する最低限の知識の習得や自社の法務・知財体制の強化に取り組むことが必要となる。大企業には、スタートアップという企業体の特性に応じた柔軟・迅速な対応・判断ができる社内体制の構築を期待する。

【産業技術本部】