Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年5月21日 No.3453  2025年に向けたコンパクトシティのあり方を聴取 -都市・住宅政策委員会企画部会

経団連は4月23日、都市・住宅政策委員会企画部会(安達博治部会長)をオンラインで開催し、早稲田大学理工学術院の森本章倫教授から、次世代交通等の動向を踏まえたコンパクトシティ政策のあり方について説明を聞くとともに懇談した。講演の概要は次のとおり。

■ 人口減少が都市に与える影響

わが国では、ここ50年間で人口が急増してきたが、それ以上に市街地が郊外に拡大してきた。こうした状況で人口減少局面を迎えたため、中心市街地の衰退、空き家の増加、公共交通の衰退、道路橋梁の維持管理など、さまざまな問題が生じてきている。

こうした問題に対処するために、人口減少にあわせたコンパクトな街づくりを進めなければならない。その際、キーワードは「多様性」であり、多様な交通手段(徒歩、自転車、公共交通機関等)を整備し、多様な拠点(生活拠点、商業拠点、生産拠点等)の連携を図ることで、都市としての持続性を確保する視点が重要となる。

■ コンパクトシティと次世代交通

交通と土地利用の歴史を振り返ると、徒歩、鉄道、自動車と交通手段が変化するにつれて、街のかたちも変化してきた。このメカニズムを使って都市をコンパクトにできるのではないかと考えられる。従来型の自動車に代わる次世代交通としてはLRT(路面電車)、自動運転車、超小型モビリティ(1~2人用の乗り物)などが注目されており、こうした新しい交通手段を上手にデザインすることによって都市のかたちを変えていくことを目指す。

例えば、人口52万人の栃木県宇都宮市では、まず「第6次宇都宮市総合計画」(2018年3月)のなかにネットワーク型コンパクトシティを盛り込み、どのような街を目指すかについて合意形成を行った。そのうえで、交通に関して、一次交通(LRT、バスなど)と二次交通(コミュニティバスなど)の双方を組み合わせながら街をつくり、地域全体に交通サービスを行き渡らせる戦略を立てている。18年からLRTの整備に着工しており、22年3月の開業が予定されている。

LRTが一部車線を占有するため、渋滞の発生が予想されるが、コンピューターシミュレーションによって比較的高い精度で予測することができる。渋滞が事前に把握できれば、道路の拡幅、交差点の整備、信号機制御の変更といった対策を事前に取ることができる。

■ 街づくりの見える化へ

街づくりにおいて重要なのは、これまで縦割りで実施されてきたさまざまな施策を組み合わせたときに、どのような街ができるかを市民に説明することだ。街はいきなり変わるわけではなく、ステップ・バイ・ステップで少しずつ変わっていく。行政がその市民に対して、その過程を示しながら、どのような都市を目指していくかについて情報発信をしていくことが大切だ。

【産業政策本部】