Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月2日 No.3459  OECD諮問委員会2020年度総会を開催

経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は6月18日、2020年度総会をオンラインで開催した。2019年度事業報告・決算および2020年度事業計画・予算に関する報告に先立ち、河野正道OECD事務次長から、OECDの最新の活動状況やポストコロナの世界経済を取り巻く課題や展望等について説明を聞くとともに活発な意見交換を行った。

■ 河野事務次長説明要旨

OECDは、6月10日に経済見通しを公表した。国・地域・産業によって異なるものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は2008年の世界金融危機よりも深刻である。感染拡大の第2波が発生しない場合、世界のGDPは20年にマイナス6.0%へと大きく落ち込んだ後、21年はプラス5.2%に反転する見通しだが、COVID-19感染拡大以前の状態への回復には数年を要すると見込まれている。

金融分野では、倒産件数の急増など実体経済が大きな打撃を受けているが、各国当局の金融緩和政策等の影響によってか、株価が上昇するなど、現実との乖離がみられる。他方、COVID-19感染拡大以前から企業債務は歴史的に高水準にあり、借り入れの急増に伴う一層の悪化に警戒する必要がある。

COVID-19感染拡大からの回復は短距離走ではなく、ウイルスの封じ込めから共存、ワクチン・治療薬の開発に至るまで長距離走となる。各国が単独でワクチンや治療法を開発するのは難しく、国際協力のもと、(1)医療対応(2)構造改革の推進(3)環境に配慮した包摂的な経済回復――を実現していくことが重要である。

また、COVID-19感染拡大前と全く同じ状態に戻すのではなく、持続可能な社会政策や教育政策を講じていくべきである。自然災害の頻度や強度の増大、昨今のバッタの大量発生にもみられるように、とりわけ環境問題の影響は依然深刻であり、気候変動対策に留意する必要がある。

世界経済が危機に直面する今こそ、OECDは、各国政府やステークホルダーの役に立つよう尽力したい。この点、OECDに期待する活動や役割について、経済界からもインプットをいただければありがたい。なお、ヘルスケアや金融、税制、貿易、デジタルなどさまざまな分野における課題やCOVID-19対策等に関して100を超える報告書(ポリシーノート)を特設ウェブサイト(※)で公開している。

■ 意見交換

経団連側出席者から、「COVID-19対策など日本の政策・施策に対する国際的な理解を深めていくうえで、OECDの取り組みに期待する」「COVID-19への対応にあたっては、他の国際機関と連携するとともに、OECDに主導的役割を果たしてほしい」などの意見が寄せられた。

これに対し、河野事務次長からは、「日本のリーダーシップを強化していくためにも、OECD内の各種委員会活動への積極的な参画やOECD事務局の日本人職員の増強に向けた経済界の協力をお願いしたい」とのコメントがあった。

※OECD COVID-19 digital hub=http://www.oecd.org/coronavirus/en/

【国際経済本部】