Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月2日 No.3459  新型コロナをめぐる現地情勢等についてジェトロの田中ヤンゴン事務所長から聞く

経団連は6月12日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の田中一史ヤンゴン事務所長とのオンライン会合を開催し、新型コロナウイルス感染症をめぐる現地情勢、現地政府や企業の状況などの説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ ミャンマーの感染状況の推移と各種制限措置

ミャンマーでは、2月28日に保健省が新型コロナウイルス感染症を法定感染症に指定するとともに、3月13日にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問が委員長を務める「COVID-19予防・制御・治療国家中央委員会」を設置するなど、初の感染者が確認された3月23日以前から感染拡大防止策を講じてきた。3月15日には入国制限措置が発表され、その後、入国ビザ発給停止、国際旅客機の乗り入れ禁止、移動や営業の制限などが行われてきた。

これら迅速な措置の結果、6月12日時点の感染者数(累計)は261名、死亡者数は6名と感染の拡大は抑えられており、最近の感染者の多くは海外からの帰国者である。

一方、5月中旬からは、出入国制限の緩和の動きがみられ、5月28日発出の内部通達によると、政府事業、建設事業、経済活動等への従事を入国目的とする外国人は、出国前に(1)搭乗前72時間以内に発行される陰性証明書を取得するとともに(2)1週間の自宅隔離を行ったことの所属機関による推薦書があれば、ミャンマー入国後の政府指定施設における隔離措置が短縮(3週間から1週間へ)され、この間に実施されるPCR検査が陰性であった場合、1週間の自宅隔離を経て職場復帰が可能となる。

このため、現地の日系企業等にとっては、4月末から5月初めにかけて帰国した多くの日本人駐在員を呼び戻し、ODA関連の各種インフラプロジェクトや新工場建設等の事業を正常化していくことが課題となっている。

■ 経済対策

ミャンマー政府は4月27日に、国内経済の立て直しを図るため、「COVID-19 経済救済計画」を公表した。同計画には、(1)金融刺激策(金利の引き下げ等)(2)貿易・投資の促進(低利融資、政府手数料の減免等)(3)労働者の保護(労働者福祉の延長等)(4)一般家庭の支援(電力料金の免除等)(5)イノベーションの促進(eコマース、許認可のオンライン化等)(6)保険医療システムの強化(隔離施設の改善・拡張等)(7)財源の確保(新型コロナウイルス基金への国家予算の再配分等)――が盛り込まれている。

■ 今後の展望

ジェトロの調査によれば、ミャンマーは地政学的な優位性や若い人口動態などの魅力を有し、製造業や不動産業など多くの日本企業が関心を寄せている。今後は、今年11月に実施される総選挙を見据えつつ、社会経済活動の正常化に向けたミャンマー政府のかじ取りに注目していく必要がある。

【国際協力本部】