Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月16日 No.3461  提言「コロナの下での自由で開かれた貿易投資の実現―包摂的かつ強靭な枠組みを目指して」公表

経団連は7月14日、「コロナの下での自由で開かれた貿易投資の実現―包摂的かつ強靭な枠組みを目指して」を公表した。同提言は、新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の危機を受け、今後あるべき貿易投資の枠組みに関する考え方などを取りまとめたもの。概要は次のとおり。

■ 新型コロナウイルス感染拡大と今後のあるべき方向性

感染拡大の影響を受け、今年の世界経済は大幅なマイナス成長が予想される。一刻も早い貿易投資の再活性化が必要であり、その際の方向性として、(1)人、物、資本、サービス等の自由な移動の維持・確保(2)デジタル化への対応(3)環境問題解決への貢献(4)途上国の包摂(5)多角的かつ自由・透明で開かれた枠組みの堅持(6)二国間・地域の枠組みによる補完――の6点を挙げている。

■ 貿易投資を通じた世界経済の復興

第一に、国際物流機能の回復が不可欠であり、感染拡大防止と両立するかたちで、重要物資の輸送従事者の隔離措置の適用緩和、交代の円滑化を図るべきである。また、医療用品等の輸出制限措置のWTO整合性確保や保護主義的措置の連鎖的拡大の阻止が不可欠である。

第二に、海外直接投資は雇用創出、技術移転等を通じて途上国はじめ各国経済を再活性化するほか、ワクチンなど国境を超えた研究開発の促進にも寄与する。WTOの投資円滑化の議論を活性化するとともに、外資制限の撤廃や投資紛争解決などWTOでカバーされない部分は、二国間・地域での枠組みを通じ、質の高いルールを形成すべきである。

第三に、コロナ禍で重要性が再認識されたデジタル化について、「信頼あるデータの自由な流通」(DFFT)を実現するため、WTO電子商取引協定の早期実現とともに、適切な個人情報保護のための二国間・複数国間での規制協力が求められる。

第四に、環境物品協定交渉の再開など、貿易が環境問題に資する枠組みを構築する一方、気候変動対策が保護主義的に適用されないよう留意が必要である。

■ WTO改革を通じた多国間枠組みの強靱化

コロナ禍で保護主義や自国第一主義の兆候がみられるいまこそ、原点に立ち返り、公正なルールに基づくWTOの多国間枠組みを堅持することが重要である。関心国間でのルール形成後、漸進的に参加国を増やすなど柔軟な方法が、前述の電子商取引協定のほか、市場歪曲的な産業補助金や強制技術移転の規律強化にあたって有効である。また、真の途上国との間で競争上の不公平が生まれないよう、本来途上国の地位を卒業すべき国は直ちにWTO上の義務を完全に引き受けるべきである。さらにコロナに関連した輸出制限などをめぐる紛争が増加する可能性を念頭に、昨年末より機能停止状態のWTO紛争解決機関の機能回復が必要である。

【国際経済本部】