Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月16日 No.3461  タイの現地情勢についてジェトロの竹谷バンコク事務所長から聴く

経団連は6月17日、オンライン会合を開催し、日本貿易振興機構(ジェトロ)の竹谷厚バンコク事務所長から、タイにおける新型コロナウイルスの影響と現状、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟をめぐる状況について説明を聴くとともに意見交換を行った。

竹谷事務所長による説明の概要は次のとおり。

■ タイの感染状況と政府の対応

タイ政府は、3月26日に、新型コロナの国内での感染拡大を踏まえ、非常事態宣言を発令。対策本部を設置し、すべての権限を首相に一元化して、学校の休校や飲食店の休業、入国制限措置等を実施した。他方、製造業の操業は規制されず、生産活動は維持されている。

非常事態宣言は6月末まで継続されているが、6月の1日当たりの感染者数は1桁台にとどまる。現在、各種の活動制限措置はほぼ緩和され、夜間外出禁止の解除、大規模な商業施設やレストランの営業再開が実現した。タイへの国際線の旅客便の乗り入れは6月末まで原則禁止だが、今後、再開される見込みである。日本の経済界からは、日本人の入国制限措置の緩和を望む声がある。

■ マクロ経済への影響と対策

タイ経済は新型コロナの影響を大きく被り、2020年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比マイナス1.8%であった。新型コロナの感染拡大以前から景気は停滞傾向にあり、民間・政府ともに投資は鈍化していた。また、成長の柱である輸出の不調が継続している。20年の成長率についてタイ中央銀行などは、マイナス5%程度と予想する。

4月の工業生産指数は前年同月比マイナス20.2%であった。その大きな要因は、3月から自動車各社が生産調整を行い、主要産業である自動車関係の指数がさらに落ち込んだことが挙げられる。

他方、テレワークの世界的な拡大による需要増加に伴い、集積回路やHDDなど電子機器の生産は堅調である。タイのGDPの7%を占める観光業は外国人の入国禁止により低迷している。タイ政府は、大規模な経済対策を累次にわたり打ち出し、成長軌道への回帰に注力している。

■ タイのCPTPP加盟をめぐる状況

18年5月に、プラユット首相がCPTPPへの加盟意欲を表明した。その後、タイ政府内で、今年4月に加盟に向けた閣議決定を行う方向で調整がなされていたが、新型コロナによってスケジュールに遅延が生じた。そうしたなか、CPTPP加盟について、医薬品の供給や食料安全保障等の観点から、NGOや一部の主要閣僚が反対を表明し、予断を許さない状況である。

こうした動きを踏まえ、プラユット首相の指示で、6月10日にCPTPP加盟の検討委員会が下院に設置され、30日以内に結論を出すこととなった。7月半ばには検討の結果が公表される予定である。タイは、製造業をはじめとする多くの日本企業にとってグローバルサプライチェーンの要となっている。タイのCPTPP加盟の実現は、日本の経済界にとっても重要であり、今後の動向を注視していく必要がある。

【国際協力本部】