Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月23日 No.3462  地方分権・地方制度改革の展開と分散型行政システムの展望を聴取 -地域経済活性化委員会

経団連は7月1日、地域経済活性化委員会(古賀信行委員長、小林哲也委員長、月岡隆委員長)をオンラインで開催し、東京都立大学法学部の伊藤正次教授から「地方分権・地方制度改革の展開と分散型行政システムの展望」と題して講演を聴くとともに懇談した。
講演の概要は次のとおり。

地方分権改革の歩みは1995年の第1次地方分権改革からスタートした。機関委任事務制度の廃止により、国と地方の関係が対等・協力へと変わり、分権型社会の構築に向かうこととなったものの、国から地方への権限移譲は実現しなかった。

99年からは市町村合併(平成の大合併)が進んだ。少子高齢化が進むなかで、フルセットで行政サービスを提供する受け皿としては、市町村の行財政基盤にはもろさがあり、その改善が目的であった。

2002年からは、いわゆる三位一体改革が取り組まれた。国から地方への税源移譲等が進んだ一方で、東京をはじめとする都市部と地方の財政格差が拡大したとの指摘もあった。

06年からの第2次地方分権改革では、地方分権改革推進法の制定や募集提案方式の導入(14年)により、国から地方への権限移譲、国による義務付け・枠付けの見直し等が行われている。

00年代前半に活発化した道州制構想は、地域の区域割り等の課題から議論が下火となったものの、それ以降は二重行政への批判から、大都市制度改革の機運が高まった。

人口減少と超高齢社会の到来により、団塊ジュニア世代がすべて高齢者となる40年ごろを見据えると、自治体は公共サービス供給と組織運営において困難に直面する。そこで、自治体間の広域連携が進むよう、地方制度改革が行われている。定住自立圏、連携中枢都市圏といった「圏域」を構成し、中心市と近隣自治体での役割分担によって行政サービスを提供する仕組みが推進されている。

第32次の地方制度調査会においても、40年ごろから逆算することで、地方行政体制のあり方を答申しており(20年6月)、広域連携制度の深化をはじめ、地方行政のデジタル化の推進等が盛り込まれている。

新型コロナウイルスの影響で田園回帰傾向があり、地方圏の自治体にはプラスの効果がみられる。この流れを活かすには、居住エリアのコンパクト化を阻害しないよう留意しつつ、ネットワーク社会を支えるインフラ整備等を進める必要があり、これまでにも増して自治体間連携の重要性は高まる。東京一極集中のリスクの再認識から、地方における首都機能のバックアップ体制構築の重要性が認識されるなか、リダンダンシー(冗長性、多重防御)を維持管理するための人材と財源をどのように確保するかが課題となる。

◇◇◇

同委員会は、Society 5.0 for SDGsの実現につながる分散型社会の実現に関する提言の取りまとめを10月に予定している。

【産業政策本部】