Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月23日 No.3462  シンポジウム「中国の政策動向とその持続可能性~中国共産党をめぐる3つの視点」を開催 -21世紀政策研究所

21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は7月3日、中国に関する研究プロジェクト(研究主幹=川島真東京大学大学院総合文化研究科教授)の成果発表としてシンポジウム「中国の政策動向とその持続可能性―中国共産党をめぐる3つの視点」(講演会とパネルディスカッションの2部構成)を開催した。同研究所として、コロナ禍で開いた初めてのオンライン会議であり、中国をはじめ海外駐在の方も参加登録された。同プロジェクトは、2018年度に経済、技術、国際関係面から、2019年度は経済・技術、財政、内政面から研究を進め、2019年度の成果として7月末に報告書「中国の政策動向とその持続可能性理解―中国をめぐる3つの視点―」を取りまとめる予定である。

講演およびパネルディスカッションの概要は次のとおり。

■ アフターコロナの日中経済連携の可能性
(丁可・ジェトロ・アジア経済研究所副主任研究員)

今後の日中関係のキーワードは、DX(デジタルトランスフォーメーション)、中国市場、米中対立の3つである。「コロナテック」といわれる中国のDXの進化、市場の早期回復、インフラ投資を見据えて、日系企業は中国とのさらなる連携や新規投資を予定している。

米中対立の悪化により、半導体やAI人材の受け皿として、日中経済連携は大きな可能性を秘める一方、プライバシー、サプライチェーンの健全化、日米同盟との関係などでリスクもある。

世界経済のデカップリングの行方は、日本の選択にかかっていると言っても過言ではない。

■ 中国における「法治」の二重性とその影響
(金野純・学習院女子大学国際文化交流学部准教授)

現在中国で模索されている「社会主義法治体系」には、強い国家実現のための手段としての一面と、裁判所の独立と公正な裁判を目指すための改革の二面がある。

前者の意味を持つ「中国型法治モデル」は、香港、ロシアをはじめ、開発途上国や海外へ展開しており、今後、世界に拡大していく可能性もある。

一方、後者の改革では、人材の育成や腐敗問題取り締りの強化、インターネットによる裁判文書の公開などが進められている。

■ 習近平氏とはどのようなリーダーか?
~地方指導者時代の著作にみる政治認識、リーダーシップ、政治家像
(鈴木隆・愛知県立大学外国語学部准教授)

習近平は、中華人民共和国建国後に生まれ、そのなかで育った初めての指導者であり、経路依存性傾向の強い保守主義の政治信条を持つ。その指導スタイルは、「圧力」をもって組織の緊張感を維持する。今後も習氏に似た政治認識を持つ指導者が出る可能性は高い。

特筆すべき経歴は、25年間の長期にわたり、海に近い地方の指導者であったこと、軍人、第1次産業の専門家であったことであり、「歴史」「海」「軍」「台湾」に強いこだわりを持つ。

■ 中国共産党政権をめぐる3つの視点
(川島真・東京大学大学院総合文化研究科教授)

経済・技術面では、マクロ消費の悪化、国有企業問題、米中対立など、継続して課題が山積みである。

内政面では、国家の安全を発展よりも優先させ、「柔らかさ」から「硬い」政治への逆行がある一方で、一見リベラル的な法治改革もあった。財政面では、テクノロジーを利用した社会保障プラットフォームが誕生するといった動きもある。

新型肺炎問題は、さまざまな分野で影響を及ぼすが、技術は継続し、中国の強みになるかもしれない。

■ パネルディスカッション

講演後、川島研究主幹がモデレーターを務め、講演者3名によるパネルディスカッションを開催。習氏の思想の転換期、今後の政権続投の条件、新型肺炎後とリーマンショック後の景気対策との比較、香港の国家安全維持法の強行の背景、日本企業の中国との付き合い方など、参加者からの質問も交えた議論を行った。

なお、シンポジウム終了後に実施した参加者へのアンケートでは、「移動時間がなく参加しやすい」「質問しやすい」「ディスプレイも見やすく、音声も聞きやすかった」など好評を博し、同研究所では、今後もオンライン会議の積極的な開催を検討していく。

【21世紀政策研究所】