Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年8月27日 No.3465  コーポレートガバナンスをめぐる昨今の動向について聴く -金融・資本市場委員会

説明する神作教授

経団連は8月5日、金融・資本市場委員会(太田純委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)を開催し、東京大学大学院法学政治学研究科の神作裕之教授から、「コーポレートガバナンスを巡る昨今の動向」と題して説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

近年、日本企業のコーポレートガバナンスは、社外取締役や監査等委員会設置会社の増加をはじめ外形的には大きく進展した。しかし重要なのは、それを形式ではなく実質的に運用することである。

コーポレートガバナンスにおける株主権の行使に関するグローバルな動向として、各国のスチュワードシップ活動にかかる行為規範の状況をみると、英国は、「UKスチュワードシップ・コード2020」を制定し、「アプライ・アンド・エクスプレイン」と呼ばれるコードの適用状況の情報開示を企業に求める改訂を行った。さらに欧州で関心が高まる気候変動などESG(環境・社会・ガバナンス)要素の考慮などが盛り込まれた。

ドイツは、EU第2次株主権指令に基づき、会社法でスチュワードシップ活動を規定している。

米国は「プルーデント・インベスター・ルール」(パッシブ投資家はスチュワードシップ活動などコストのかかる業務は行わない)の観点から、投資家がスチュワードシップ活動に懐疑的であったが、2018年に民間組織がスチュワードシップ・コードを策定している。

日本の場合、特にコーポレートガバナンス・コードは東京証券取引所(東証)の上場契約に盛り込まれるため、東証の上場区分に影響を与えるなど、非常に拘束力が強い。

来年にかけて予定されているコーポレートガバナンス・コードの再改訂の内容は、未来投資戦略2018に基づくと、事業ポートフォリオやグループガバナンスに関するエンゲージメントの推進が中心になると見込まれる。

他方、引き続き、社外取締役の役割や比率など基本的なコーポレートガバナンスの仕組みの実践と検証、感染症のパンデミックリスクへの対応、完全バーチャル株主総会をはじめIT利用の促進、非財務情報など企業価値の評価基準の変容への対応なども、あわせて検討を進める必要がある。

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講演後、IT技術の進展に伴う会社法改正の必要性や、企業年金のスチュワードシップ活動のあり方、米国で行われた議決権行使助言会社への規制の日本への影響などについて意見交換を行った。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】