Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月10日 No.3467  日米中関係のあり方について國分防衛大学校長から聴く -2020年度防衛産業委員会総会を開催

経団連は8月24日、東京・大手町の経団連会館で防衛産業委員会(泉澤清次委員長)の2020年度総会を開催し、防衛大学校長の國分良成氏から、「コロナ禍のなかの東アジア~中国情勢と日米中関係を中心に」と題する講演を聴くとともに意見交換を行った。

また、防衛省の菅原隆拓人事教育局長から、企業における任期制自衛官の採用についての協力要請があった。國分氏の講演の概要は次のとおり。

■ コロナ禍のなかの国際秩序

新型コロナウイルス感染症の流行により各国がその対応に追われるなか、米国の覇権的地位が低下し、国際社会の秩序が揺らいでいる。米国は自国第一主義を進めるなかで、WHO(世界保健機関)の新型コロナ対応を批判して脱退する方針を示し、WTO(世界貿易機関)からの脱退も警告している。

一方、国際機関の自立性や信頼性が問われるなかで、WHOやWTOにおける中国の影響力が大きくなっている。中国は、国際秩序が動揺したニッチ(隙間)に入り込んでいる。

■ 中国の習近平体制

新型コロナの拡大を受け、中国は患者を迅速に発見して効率的に対処した。しかし、徹底的な情報統制が行われ、国民の民主的な合意は存在しなかった。初動の遅さや情報の隠蔽など政治体制の欠陥もみられた。

中国共産党の権力の維持は、中国の政治体制における核心的な利益である。鄧小平体制で始まった経済の改革・開放は、米中対立などを背景に経済成長の鈍化が明確化するなかで、今はほとんど語られない。習近平体制は共産党政権の正統性を維持するために、全体主義化、個人崇拝、統制強化を進め、人口の1割程度にすぎない支持基盤である既得権益層の利益を重視している。

昨今、中国政府は、香港に対する統制を強化している。香港では一国二制度のもとで普通選挙の全面的な実現が目指されたが、14年に中国政府は行政長官の選出に関与を要求し、香港の民主化が揺らいだ。今年は国家安全維持法を制定し、香港への規制を強化している。香港は金融センターとして重要である一方、民主化の影響が大陸の体制に及ぶことへのおそれが背景にある。

■ 米中関係

米中対立の本質は、資本主義と共産主義の体制・イデオロギーの違いにある。1970年代に、米国と中国はソ連を共通の敵として、体制を超えた友好関係を築いた。しかし、89年にソ連が崩壊して、米中の体制の違いが再び現れ始めた。

米国など西側諸国の期待に反して、90年代以降も中国の共産主義体制は変わらなかった。2018年には憲法を改正して国家主席の任期を撤廃したため、米国は強権化を進める中国への不信感を強めている。トランプ政権が安全保障や経済で対中強硬姿勢を取る根幹には、両国の体制の本質的な違いがある。

■ 日中関係

現在の日中関係は、「不安定ななかの安定」の状況にある。中国にとっては米国との対立が最大の問題であり、習近平政権は日本との歴史問題に言及しなくなっている。

日中関係については、日米同盟に軸を置き、政治と経済を一体として対応するべきである。その際、中国が変わることへの期待や情念ではなく、歴史や国際関係の流れを押さえ、客観的な事実を踏まえることが重要である。

【産業政策本部】