Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月17日 No.3468  「Society 5.0時代のサプライチェーン」を公表 -商流・金流のデジタル化に向けた施策を整理

経団連は9月15日、報告書「Society 5.0時代のサプライチェーン」を公表した。

近年、わが国のサプライチェーンにおいては、大企業を頂点とする階層構造から、企業間での情報共有や協業が進む水平構造への変化がみられる。こうしたなか、中堅・中小企業を含むサプライチェーン全体のデジタル化を推進することで、さまざまな主体の連携を促し、新たな価値の創造、わが国産業の国際競争力強化につなげていく必要がある。

また、サプライチェーンのグローバル化の拡大・深化、中小企業における高齢化・人手不足の深刻化といった環境変化に対応するうえでも、デジタル技術の活用に期待がかかる。さらに昨今、感染症対策として接触機会の抑制が求められており、サプライチェーン全体で業務の遠隔化・非接触化に取り組むことが欠かせない。

同報告書では、特に製造業の系列取引を念頭に、商流・金流のデジタル化に向けて必要な取り組みについて、「デジタル化による個社業務プロセスの見直し」と「企業間取引の効率化・見える化」の2つに整理している。

■ デジタル化による個社の業務プロセスの見直し

中小企業においても、人手不足などを背景にデジタル技術導入の機運が高まる一方、人材や知識の不足、費用対効果への理解不足などの課題に直面している。その克服に向けて、官民でデジタル化に対する支援を行うことが重要となる。

また、人材育成や地域支援体制の構築・強化も欠かせない。一定規模以上の企業においては、自律的にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していけるよう、産官学連携などにより社内IT人材の育成を推進するとともに、個社に合わせた適切かつ迅速な支援ができるよう、政府や関係団体が専門家派遣、支援拠点の拡充と活用促進に取り組むことが重要となる。

■ 企業間取引の効率化・見える化

商流(受発注等)については、電話やファクシミリなどアナログベースの商慣習が根強く残っている現状において、国や大企業から中小企業に対して受発注システム(EDI)の導入を促すことが求められる。また、取引先ごとに異なるEDIシステムが使われる「多画面問題」を防ぐためにも、データ連携方法の標準化が不可欠であり、政府が国際標準に準拠して整備した「中小企業共通EDI」の普及が重要である。

金流(決済等)のデジタル化については、紙媒体でのやり取り・管理、売掛金の消込などの経理業務を効率化すべく、「全銀EDIシステム」と商流EDIとの連携により、受発注から決済まで一貫した経理処理の自動化を図ることが望ましい。あわせて、電子記録債権の活用やフィンテックによる資金繰りの円滑化が期待されるほか、決済等の取引データを活用することで、企業の信用力が可視化できるようになる可能性もある。

■ 製造現場のデータ共有・活用~さらなる検討課題

同報告書では、今後の検討課題として、製造現場のデータ共有・活用にも触れている。製品・設備データや技術・ノウハウに関するデータなど、製造現場のデータを活用することで、コストの適正化、品質検査の自動化や新たな価値の創出につながることが期待される。また、今後も起こり得る感染症のパンデミックなど、さまざまなリスクに対して強靱なサプライチェーンを構築するうえでも、データ活用が重要な役割を果たす可能性があり、具体的なデータの取り扱いなどについて検討する必要がある。

経団連は今後も、サプライチェーン委員会を中心に、デジタル化の推進を含むサプライチェーンの諸課題について検討していく。

【産業政策本部】