Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月17日 No.3468  高齢者が安心して活躍できるための労働安全衛生対策 -エイジフレンドリーガイドラインについて厚労省が説明/労働法規委員会労働安全衛生部会合同ワーキング・グループ

経団連は8月7日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会労働安全衛生部会労働衛生ワーキング・グループ(白幡光治郎座長)と、高年齢労働者の安全衛生対策ワーキング・グループ(向井伸行座長)、産業安全ワーキング・グループ(山岸新一座長)、労災保険ワーキング・グループ(砂原和仁座長)との合同会合を開催し、厚生労働省が2020年3月に取りまとめた「エイジフレンドリーガイドライン」について、同省労働基準局の安達栄安全衛生部安全課長から説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

近年の人手不足感のなかで、高齢者の雇用の場が広がったことなどから、高年齢労働者の雇用者数は過去10年で約1.5倍に増加し、雇用者全体に占める60歳以上の高齢者の割合も17.8%(19年)となっている。一方で、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の高齢者の割合は26.8%(同年)に達する。労働災害発生件数は横ばい傾向であるにもかかわらず、高齢者の被災は増えている。

高齢者の労働災害の特徴としては、転倒災害が多く、高年齢になるほど災害発生率が上昇し、特に高齢女性の災害発生率が高いことなどが挙げられる。高齢者は壮年者と比べて聴力、視力、平衡感覚、筋力等の衰えがみられ、このことが労働災害の発生に影響していると考えられる。

こうした状況を受け厚労省では、有識者による検討を経て、高齢者が能力を発揮し、安心して活躍できるようにするための留意事項を整理した「エイジフレンドリーガイドライン」を取りまとめた。同ガイドラインは事業者と労働者双方に求められる事項を述べている。

事業者に求められる事項として、(1)安全衛生管理体制の確立等(2)職場環境の改善(3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握(4)高年齢労働者の健康状態や体力に応じた対応(5)安全衛生教育の実施――を挙げている。職場改善の例として、「段差など解消できない危険箇所に標識等で注意喚起する」「不自然な作業姿勢をなくすよう作業台の高さや作業対象物の配置を改善する」といった企業ヒアリングなどに基づいた取り組み例を紹介している。

他方、労働者に対しては、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むことが必要であることを注意喚起している。

厚労省は、ガイドラインに基づいた中小企業の取り組みを支援するために、今年度からエイジフレンドリー補助金を創設した。同補助金は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費を100万円まで補助するもの(補助率は1/2)であり、積極的な利用を期待したい。

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意見交換では、エイジフレンドリー補助金の財源となっている労災保険財政は今後厳しくなることが予想されるため、今年度の政策効果を踏まえて来年度予算は精査すべきだなどの意見が出された。

【労働法制本部】