Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月17日 No.3468  今後の石綿飛散・ばく露防止対策について環境省・厚労省から聴く -石綿飛散防止対策に関する合同ワーキング・グループ

経団連の環境安全委員会環境管理ワーキング・グループ(吉住正浩座長)、労働法規委員会産業安全ワーキング・グループ(山岸新一座長)は、労働法規委員会の労働衛生ワーキング・グループ(白幡光治郎座長)、労災保険ワーキング・グループ(砂原和仁座長)とともに8月25日、東京・大手町の経団連会館で合同会合を開催した。現在、環境省と厚生労働省において石綿の飛散防止と健康障害防止に向けた対策の強化が進められている。そこで、環境省の長坂雄一大気環境課長ならびに厚労省の木口昌子化学物質対策課長から、石綿の飛散・ばく露防止対策、健康障害防止対策の改正内容について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 大気汚染防止法(大防法)の改正と石綿飛散防止技術的事項の検討状況(環境省)

大防法では、1995年の阪神淡路大震災による倒壊建物での石綿飛散を契機に、建築物の解体等工事に伴う石綿飛散防止の規制を導入・拡大してきた。前回の法改正(2013年)の施行状況の点検で、規制対象でない石綿含有建材の不適切な除去による石綿飛散や、事前調査における石綿含有建材の見落としといった課題が明らかになった。今回の大防法の改正点は主に、(1)特定建築材料(飛散性の高い順からレベル1建材〈吹付け石綿〉、レベル2建材〈石綿含有断熱材等〉)に、相対的に飛散性の低いレベル3建材(石綿含有成形板等)を加え、すべての石綿含有建材に規制対象を拡大(2)石綿含有建材の有無にかかわらず、都道府県等に対する事前調査結果の報告の義務付け(3)不適切な除去作業を行った場合(隔離等をせずに吹付け石綿の除去作業を行う等)の直接罰の創設(4)作業結果の発注者に対する報告と作業記録の作成・保存の義務付け――の4点である。(1)(3)(4)は21年4月1日、(2)は22年4月1日に施行予定である。

現在、作業基準や事前調査の方法といった技術的事項を含む政省令案についてパブリック・コメントを実施中であり、その結果を踏まえ、今年秋ごろに改正政省令を公布する。

■ 石綿障害予防規則(石綿則)等の改正(厚生労働省)

過去の石綿建材使用時の石綿ばく露により、毎年約1000人が石綿関連疾患として労災認定されている。今後石綿使用建築物の解体工事が増加することから、解体工事従事者へのばく露防止対策の強化が必要である。関係者や専門家による検討や労働政策審議会での審議を経て、石綿則等の改正を行い、多くの項目で21年4月に施行することとなった。改正内容は事前調査結果等の届け出など、大防法の規制内容と基本的には同じである。届け出先は、大防法では都道府県等、石綿則では労働基準監督署になるが、内容が同じであるため、同じ帳票で電子申請できるように環境省と連携してシステム構築を行っている。また、事前調査と分析調査を行う者の要件を新設したことに伴い、今後、全国的な講習を行い、資格を有する者を養成していく(30万人~40万人が目標)。

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意見交換では、経団連側から両省に対し、事前調査を行う一定の知見を有する者の育成の際のテキストの共通化や、使いやすい届出システムの構築など、着実な体制整備を求めた。また、大防法と石綿則の規制内容の相違がすぐにわかるような資料を作成することを要望した。さらに、環境省に対し、今後の課題とされた大気濃度測定の全国一律の義務化について、迅速に結果を得られる測定方法や機器の開発をはじめ、実務上の課題の解決が不可欠と指摘した。

【環境エネルギー本部、労働法制本部】