Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月1日 No.3469  ウィズコロナ、ポストコロナのグローバル・バリューチェーン -戸堂早稲田大学教授が講演/サプライチェーン委員会

経団連のサプライチェーン委員会(立石文雄委員長、山内雅喜委員長)は9月2日、オンラインで会合を開催。早稲田大学政治経済学術院経済学研究科の戸堂康之教授から、ウィズコロナ、ポストコロナのグローバル・バリューチェーンについて説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ グローバル化は経済成長の源泉

新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、世界のグローバル化は停滞していた。2008年のリーマンショックでは、グローバル化が海外の経済ショックを呼び込むリスクを顕在化させ、新型コロナウイルスの感染拡大初期には、中国の生産活動が大幅に減退し、世界の経済に影響を与えた。また、多くの国が医療関連物資や食料の輸出制限を行い、グローバル化が安全保障の脅威となることが明らかとなった。

しかし、グローバル化を通じて、新しい情報や知識を得ることは経済成長の源泉であり、リスクを恐れるあまりに保護主義に走ることはさらに自身を苦境に追いこむこととなる。

■ 強靱なグローバルサプライチェーンに向けて

かつて日本は、アジア太平洋地域のサプライチェーンの中心であったが、現在その地位を中国に取って代わられ、輸出入をかなり中国に依存している。

このため、まずは過度な中国依存を減らし、より多様にグローバル化すべきである。国内に生産拠点を回帰させるだけでは、大規模な災害が日本で発生した場合に十分に対処できない。生産拠点や、取引先をグローバルに分散すれば、代替生産や販売でリスクを軽減できる。

今後、ロボット化、IT・IoT化によって、生産における人件費割合が減り、発展途上国に生産拠点を設けるメリットが小さくなると見込まれる。このことから、欧米や台湾、オーストラリア等の先進地域での海外展開を拡充することで、サプライチェーンの分散化を図ることが有用と考えられる。近年、顧客からデータを収集し、企業活動に利用することが増えているが、一部の新興国は集めたデータを政府に開示することを求めており、進出リスクが大きい。

加えて、より高付加価値を生み出すためには、部品の供給関係でつながるサプライチェーンを超えて、研究開発やデータ分析等でも企業間で連携する重層的なバリューチェーンを構築することが重要となる。日本企業は、国際共同研究で質の高い特許を生み出し、イノベーションの質を27%上昇させているという研究結果がある。重層的なつながりは、有事においても互いに助け合い、取引を継続させる強靱なつながりとなる。

【産業政策本部】