Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月8日 No.3470  最近の労働基準行政について厚労省から聴く -労働法規委員会

経団連は9月15日、労働法規委員会(冨田哲郎委員長)をオンラインで開催し、厚生労働省の吉永和生労働基準局長から「最近の労働基準行政」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 副業・兼業の普及促進

本業以外でも働く「副業・兼業」の希望者は近年増加傾向にある。総務省「就業構造基本調査」によれば、副業を希望する雇用者は1992年の約235万人から2017年には約385万人となり、雇用者全体に占める割合も約4.5%から約6.5%へと増加した。

副業・兼業を行う場合、労働基準法上の労働時間に関する規定をどのように適用するかが問題となる。同法第38条と1948年の労働基準局長通達に基づき、事業場や事業主が異なる場合には労働時間を通算して規定を適用するところ、過重労働による本業への支障の懸念や、労働時間の管理・把握の負担等の理由により、副業・兼業に慎重な姿勢を取る企業もみられる。

厚労省は、2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定するとともに、モデル就業規則を改定して副業・兼業に関する規定を新設した。こうした基本的な枠組みに加えて、働き手の健康確保や企業・労働者の双方が対応できる労働時間管理ルールの明確化を図る観点から、労働政策審議会等における議論を経て、今年9月1日に前述のガイドラインを改定した。改定版では、副業・兼業の有無・内容の確認方法や簡便な労働時間管理の方法、健康確保のあり方等を明記した。ガイドラインの改定と同時に、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)の施行により、複数就業者が安心して働けるよう労災保険制度が見直された。例えば、働き手が副業・兼業先で事故に遭遇し、本業も含めて休業した場合、従来は副業・兼業先から支払われる賃金のみを算定基礎として補償が行われたところ、本業も含む合計額で算定基礎を算出できるようにした。

■ テレワークの推進

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機に、時間と場所を有効に活用できる柔軟な働き方「テレワーク」が急速に普及している。他方、労働時間管理のあり方やコミュニケーション不足への対応等、テレワークをめぐる検討課題もみえてきた。

そこで、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」(座長=守島基博学習院大学教授)を立ち上げ、労働者が安心して働くために必要な環境整備に向けた検討を進めている。雇用型テレワークガイドライン(情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン、18年2月策定)の改正等も視野に、テレワークの実態を踏まえた就業ルールの整備に取り組んでいきたい。

■ フリーランスの環境整備

企業に雇われずに働く「フリーランス」については、多様な働き方の推進や高齢者雇用の拡大等の観点から適正な拡大が不可欠である。しかしながら、発注時点で取引先から報酬や業務内容が明示されない事例や、報酬の支払いが遅延する事例等のトラブルを経験する例が少なくない。また、業務委託を受けているにもかかわらず、業務内容や遂行方法に関して具体的な指示を受ける事例もみられる。

こうしたなか、「成長戦略実行計画」(令和2年7月17日閣議決定)において、独占禁止法や下請法、労働関係法令の適用に関する考え方を整理し、実効性・一覧性のあるガイドラインを策定することや、労災保険の特別加入制度の対象拡大も検討することが盛り込まれた。関係省庁との連携のもと、フリーランスが安心して働ける環境を整備していく。

【労働法制本部】