Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月8日 No.3470  企業会計基準委員会からIASB公開草案「全般的な表示及び開示」への対応について聴く -金融・資本市場委員会企業会計部会

経団連は9月16日、金融・資本市場委員会企業会計部会(野崎邦夫部会長)を開催し、企業会計基準委員会(ASBJ)の小賀坂敦委員長、川西安喜副委員長から、国際会計基準審議会(IASB)公開草案「全般的な表示及び開示」に関するASBJの対応について説明を聴いた。
説明の概要は次のとおり。

■ IASB公開草案「全般的な表示及び開示」

IASBは、9月30日をコメントの締め切りとして、公開草案「全般的な表示及び開示」を公表した。

同案は、損益計算書の表示や開示の改善を目的とした「基本財務諸表プロジェクト」の一環である。主な提案は次の3点。

1点目は、「損益計算書の小計は、企業間で比較可能である必要がある」との投資家からの声を受け、会計基準により定義された小計を損益計算書に追加することを求める。損益計算書を「営業」「投資」「財務」の3つに分けて、小計表示を要求する。「営業損益」は「投資」「財務」に該当しない残余の損益とする。

2点目は、「詳細で分析しやすい情報を開示すべき」との投資家からの声を受け、通例でない収益および費用等の注記を企業に求める。

3点目は、「投資家向けに開示される経営者業績指標(投資家向けに開示されるさまざまな業績指標等)を、透明性がある方法で開示すべき」との投資家からの声を受け、経営者業績指標について、基本的に注記での開示を求める。

■ IASB公開草案に対するASBJの対応

ASBJは、IASBの公開草案に対するコメントを作成し、IASBの提案の多くに反対している。

まず、損益計算書で3つの新しい小計を表示する提案は、企業の実態を踏まえた小計とはならず、企業と投資家とのコミュニケーションの改善にもつながらない。「営業損益」は残余としてではなく、営業損益を表示する目的を明らかにしたうえで、直接的に定義すべきである。

また、経営者業績指標は、企業業績について経営者の見方を伝える重要な指標であることから、注記で開示を求めるのではなく、損益計算書本表で表示すべきである。

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ASBJのコメントの方向性に企業から賛同する意見が相次いだ。野崎部会長、石原秀威部会長代行は、「ASBJのコメントは経団連の考え方と方向性を一にしている。経団連を含めたわが国市場関係者と連携のうえでオールジャパンでの意見発信をお願いしたい」とコメントした。

ASBJとの意見交換の後、IASBの公開草案に対する企業会計部会の意見書の審議を行い、9月30日に意見書を提出した。

【経済基盤本部】