Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月8日 No.3470  日本の知的財産をグローバルな課題解決に活かすための連携 -企業行動・SDGs委員会企画部会

経団連は9月15日、企業行動・SDGs委員会企画部会(上脇太部会長)をオンラインで開催し、持続可能な調達やインフラ整備等を専門に活動する国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)グローバル・イノベーション・テクノロジー部門のヨナス・スヴェンソン代表から、SDGs(持続可能な開発目標)課題解決のための新たな官民連携の枠組みについて説明を聴き、意見交換した。概要は次のとおり。

■ 日本のイノベーション創発力への期待

感染症の世界的拡大、貧困、ジェンダー格差、気候変動、グローバルサプライチェーンの持続性などの地球規模課題を解決するためには、イノベーションが必要である。

研究開発支出額の対GDP比率のOECD調査データでは、2001年以降の加盟国平均は2%強だが、日本は3%以上を維持している。また、技術特許の申請数は、加盟国平均では06年以降申請数が大幅に減少している。世界ではイノベーション事業は大学などの研究機関から派生したスタートアップが担っており、投資家の目線が厳しくアイデアよりも組織や研究者の資質が重視されることが減少の要因となっている。

他方、日本が堅調に推移しているのは、大手企業が大学に研究助成するケースが多く、税控除もあり、アイデアが重視される傾向にあるためである。安定的にイノベーションに投資されており、価値ある技術を持つ日本企業との対話を促進していきたい。

■ 神戸市にイノベーション拠点を開設

UNOPSはSDGs課題解決のための新たな官民連携の枠組みとして、「グローバルイノベーションセンター(GIC)」を兵庫県および神戸市と連携して、今年11月に開設する。現場における課題解決型イノベーションのためには、アイデアを実現するためのコラボレーションが重要であり、研究者やクリエーターを一堂に集めてソリューションを生み出す場が必要となることから、世界各地にGICを設置している。

GICは、イノベーションの種となるアイデアを持つスタートアップと、国、企業、投資家、学界などを結びつけ、クリエーションの空間をつくり、新たなパートナーシップを生み出すための要の役割を担っている。こうした活動を促進するため、自信がある技術やソリューションにより、グローバル企業には世界市場でのイノベーションを、ローカル企業には日本でのイノベーションを支援してほしい。グローバルメンバーになった場合、毎年1つのチャレンジをUNOPSと一緒に推進することができる。

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スヴェンソン氏の説明後、今年2月にUNOPSと協業契約を締結したソニーのスタートアップアクセラレーション部門の小澤信夫氏が、UNOPSと共同で決定した「テクノロジーを用いた強靱なインフラをつくり、気候変動への対処を強化する」をテーマとするUNOPSのグローバルイノベーションチャレンジについて紹介した。

グローバルイノベーションチャレンジでは、気候データをセンシングとAI技術で的確に分析することで、気候変動に迅速に対応できるイノベーションを募集したところ、98カ国から624件の応募があった。内容は、持続可能な農業、生物多様性、危機管理、ヘルスケアなど多岐にわたる。1次選考が終了し、25の案件が最終選考に進んでいる。11月上旬にはブートキャンプを実施し、最終5組を選出する予定である。

小澤氏は「ソニーは、クリエイティビティーとテクノロジーで世界を感動で満たすというパーパスを掲げている。テクノロジーを活用し、地球規模、中・長期のスパンでイノベーション支援を行っていきたい」と述べた。

【SDGs本部】