Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月8日 No.3470  コロナ禍における国際教育の現状と課題 -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は9月14日、教育・大学改革推進委員会企画部会(宮田一雄部会長)をオンラインで開催し、立命館小学校・中学校・高等学校代表校長を務める立命館大学国際教育推進機構の堀江未来教授から、コロナ禍における国際教育の現状と課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 立命館小学校・中学校・高等学校におけるグローバルリーダー育成の取り組み

本校は「新たな価値を創造し、社会に貢献できるグローバルリーダーの育成」をミッションに掲げ、小学校1年から始まる多様な国際教育の取り組みを行っている。小学4年以降に始まる海外研修では、異文化体験を学びや成長につなげられる仕組みの構築や事前事後指導を行っている。

特に高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール指定校として、理系の知識・技能、英語運用能力、多文化協働力を身につけた国際理系人材の育成に取り組んできた。具体的には、本校生徒が海外生徒とオンラインや対面で共同研究を進めるプログラムを設け、毎年、本校で開催している国際科学フェアに海外生徒を招聘し、共同研究の成果を発表・議論を行うといった活動を行ってきた。

今年は、新型コロナ禍で国際移動が制限されているため海外生徒を招聘できないが、本校の生徒は早々にICTスキルを習得し、国際共同研究を着実に進め、国際科学フェアをオンライン形式で開催することを計画している。

■ 国際教育の取り組みが目指すもの

本校の国際教育は、異文化体験を通じた、問題発見・解決力や感情のコントロールなどの非認知的能力の育成とともに、自分たちのやり方が一番よい・正しいと信じてすべての物事を自分の基準で判断・評価する「自文化中心主義」を超えて、自分の文化を多様な文化の1つに位置づけ物事や事象を多面的にとらえる「文化的相対主義」のマインドの醸成を目指して取り組んでいる。「文化的相対主義」のマインドがあれば、異文化体験で得たさまざまな考え方や価値観、行動様式などを自分の選択肢に取り入れ、状況に応じて適切に使い分けられ、異文化間の橋渡し役としてリーダーシップを発揮することができる。

「自文化中心主義」から「文化的相対主義」に至るまでの異文化感受性の発達レベル(注)は5段階ある。異文化体験が生徒にとってプラスにはたらくためには、海外研修の事前学習において、見えない違いも含めて異文化に興味を持ち、異なる基準や価値観を理解しようとする「受容」のレベルに引き上げておくことが重要である。

■ 国際教育の課題

国際教育を行ううえで、子どもたちを指導する側の「グローバルマインド」の底上げやICTスキルの向上が課題と感じている。また、新型コロナ禍への対応のなかで、コンフォートゾーンの外で成長し続ける大人としてのロールモデルを子どもたちに見せることも重要であると考える。

(注)異文化感受性には、「自文化中心主義」から「文化的相対主義」に至るまでに「否定」「二極化」「最小化」「受容」「適応」の発達段階がある。

【SDGs本部】