Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月22日 No.3472  独禁法改正により導入される新制度について公正取引委員会から聴く -経済法規委員会競争法部会

経団連は10月9日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)を開催し、公正取引委員会から、独占禁止法改正により導入される新制度について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 新制度の概要

2019年6月に、課徴金制度を中心に独占禁止法の改正を行った。同改正により、課徴金の算定期間の延長や算定基礎の追加などを行うとともに、課徴金の「調査協力減算制度」を導入する。また、事業者と弁護士との相談を促し、同制度をより機能させる観点から、事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容を実質的に保護する「判別手続」も導入する。両制度の詳細を定める公正取引委員会の規則・指針が、それぞれ20年の6月と8月に成案となり、改正独占禁止法とともに12月25日に施行予定である。

■ 調査協力減算制度

課徴金を、従来の申請順位に応じた画一的な減算ではなく、申請順位に基づく固定部分(課徴金減免制度)と公正取引委員会の調査への協力度合いに応じた変動部分(調査協力減算制度)の合算で減算するというものに改正した。事業者が十分な協力を行えば、減算率は現行制度より高くなる。課徴金減免申請者数の上限が撤廃されたのも特徴。また、減免申請の方法は、従来のファクシミリから電子メールへ変更される。

事業者は、課徴金減免申請が受理された旨の通知を受けた後、協議の申出を行い、公正取引委員会と減算率に関し合意をする。特定割合での合意も可能だが、合意後の(公正取引委員会からの求めに応じた)事業者の協力も評価すべく幅をもった合意も可能である。

公正取引委員会は事業者と密にコミュニケーションを取りつつ、調査への協力度合いを評価し変動部分を決定するが、評価要素は、(1)具体的かつ詳細であるか(2)事件の真相の解明に資する事項について網羅的であるか(3)事業者が提出した資料により裏付けられるか――の3つ。調査開始前に課徴金減免申請が行われた場合、1つ満たせば10%、2つで20%、3つで40%(調査開始後の場合には5%、10%、20%の順)となるが、減免申請が受理された時点で一定の資料が提出されていることから、(3)は常に満たす。また、(1)(2)に関しても、事業者が把握し得る限りの情報提供を行っていれば満たす。

■ 判別手続

事業者と弁護士とで秘密に行われる通信の内容が記録されている物件について、事業者の申出により、公正取引委員会の審査官がその内容にアクセスすることなく事業者に返却する手続き(判別手続)が導入される。

手続きの対象は、独占禁止法の「不当な取引制限」(カルテル等)に関する事業者から日本の弁護士への相談および日本の弁護士から事業者への回答であり、事実を主たる内容とするものは対象外である。また、事業者には、対象物件につき、(1)対象物件である旨の表示(2)対象外物件と区別された保管(3)内容を知る者を弁護士に相談する職責にある者等に限定すること――といった「適切な保管」が求められる。

「適切な保管」がなされている場合、立入検査に入った審査官は、対象物件を封に入れ判別官に移管する。その後、事業者は対象物件の概要文書を提出し、判別官は、同文書や事業者との丁寧なコミュニケーションを通じ対象性を判断のうえ、対象であれば事業者に還付、対象外であれば審査官に移管、という手続きを行う。

【経済基盤本部】