Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月5日 No.3474  OECD、BIACと国際課税に関する会議を開催 -「経済のデジタル化と課税」等について意見交換

経団連の税制委員会(宮永俊一委員長、柿木厚司委員長)と21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は10月20、21の両日、OECDおよびOECDに対する民間経済界の諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)と国際課税に関する会議をオンラインで開催した。同会議はOECD・G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを契機として2015年に始まり、今回で第6回となる。

青山慶二 21世紀政策研究所研究主幹、パスカル・サンタマン OECD租税政策・税務行政センター局長、武藤功哉 財務省主税局国際租税総括官、アラン・マクリーン BIAC税制・財政委員会委員長代理をはじめ、インド、フランスの税務当局関係者、会員企業から200名超が参加し、「経済のデジタル化に伴う課税上の課題」を中心にパネルディスカッションを行った。

OECD・G20では、新たな国際課税ルールに関して、21年半ばまでに結論を得ることを目指して検討を進めている。当該ルールは、市場国への新たな課税権の配分等を扱う第1の柱と、国際的に統一の最低税率の設定等を目指す第2の柱から構成される。同会合の前週には、両柱の骨格となる「青写真」が公表され、OECDと経済界の意見交換を行ううえで、国際的に最も早いタイミングでの会合開催となった。

第1の柱に関するパネルディスカッションでは、OECDから、大規模な多国籍企業グループのうち、市場国への利益の配分対象となる事業の範囲(自動化されたデジタルサービスと消費者向けビジネスを対象)や、市場国での売上等に応じた配分ルール等について説明があった。他方で、配分対象となる利益の決定に必要な閾値は未決定であるなど、今後も引き続き国際的な協議を要する論点も示された。これに対し日本企業からは、市場国への利益配分は控えめな水準とすべきとしたうえで、制度導入に伴う過大な事務負担の回避および対象範囲の明確化が重要との認識が示された。加えて、義務的・拘束力のある紛争予防・解決手段の確保が不可欠との主張が行われた。

第2の柱に関するパネルディスカッションでは、すべての多国籍企業グループによる最低限の法人税負担を確保するため、(1)軽課税国にある子会社等に帰属する所得を最低税率まで親会社の国で課税(所得合算ルール)(2)軽課税国への支払いを行っている子会社等に対し、支払い会社の国で課税(軽課税支払ルール)――等についての検討が進められており、最終合意により近い状況との説明があった。これに対し日本企業からは、簡素化が重要であり、国ごとの租税負担割合の計算に際して、リスクの低い高税率国を除外する観点から、計算の対象とすべき国・子会社を一定の閾値により大幅に絞り込む必要がある等の意見が示された。

会議では、第1、第2の柱の導入に伴う税収の影響評価のほか、BEPS対応措置の実施状況等についてもディスカッションを行った。経団連は今後、第1、第2の柱の制度化に際し、日本企業の問題意識や要望が十分反映されるように、12月中旬にかけての市中協議に対応する。

【経済基盤本部】