Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月5日 No.3474  最近の香港情勢等について外務省から聴く

経団連は10月16日、外務省アジア大洋州局の遠藤和也参事官から、最近の香港情勢や日本・香港関係等について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 激動の香港情勢の背景と経緯

昨年、香港では「逃亡犯条例」の改正をきっかけに、大規模デモ、抗議活動が繰り返し行われた。デモ隊の掲げる「五大要求」と中国・香港政府の対応には大きな隔たりがあり、ひずみは拡大した。

これらの背景として、2014年の「香港セントラル占拠」以降の「一国二制度」を揺るがす事案の頻発、格差・住宅難等の経済・社会問題の顕在化、香港における反中・嫌中感情ならびに香港人としてのアイデンティティーの高まり、香港経済の相対的地位の変化等が挙げられる。

こうしたなか、今年6月、中国全国人民代表大会常務委員会において「香港国家安全維持法」が採択、即日施行された。その規定の抽象性や広範性、管轄当局の広範な権限等に懸念が示されてきている。

これに対して日本政府は、外務大臣談話を発出し、法律制定に遺憾の意を示した。また、香港における日本国民や日本企業等の活動や権利がこれまでと同様に尊重・保護されること、および香港市民の権利や自由が尊重されることを、関係国と連携しつつ中国政府に求めていく旨を表明した。

■ 香港をめぐり米国は強硬姿勢を堅持

香港情勢が米中対立に影響を与え、逆に米中対立も香港情勢に大きな影響を与えている。

昨年、米国は「香港人権・民主法」を施行し、香港における民主運動活動家等の人権を侵害した者に対する罰則を定めた。また、「香港国家安全維持法」施行後に、「香港自治法」を成立させ、香港の高度な自治を侵害した外国人や海外金融機関への制裁を可能とした。

今年10月14日、米国国務省は同法に基づき、自治侵害に関与した複数名の人物を指定した。今後、60日以内にそれらの人物と相当の取り引きを行う金融機関を特定する制裁を下す可能性がある。米国による金融制裁が発動されれば、香港のみならず外国企業にも影響が大きくなり得る。状況を注視していく必要がある。

■ 国際情勢に留意しつつ日・香港関係強化を推進

当面は、米中関係の推移や「香港国家安全維持法」の運用等に留意する必要があるが、今後も適切なかたちで日本と香港の結びつきを一層強化していくことが重要である。訪日旅行者・日系企業も多く、過去15年間、日本の農林水産物の最大の輸出先である香港との結びつきは強いものがある。日本政府としては、まずは、新型コロナウイルス感染症により中断している日本・香港間の人の往来の再開に向けて協議を進めている。

【国際協力本部】