Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月20日 No.3529  2022年版経労委報告を公表 -「ポストコロナに向けて、労使協働で持続的成長に結びつくSociety 5.0の実現」

記者会見する大橋副会長

経団連(十倉雅和会長)は1月18日、春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスや雇用・労働分野における経団連の基本的な考え方を示す「2022年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。

同日、記者会見を行った同委員会委員長の大橋徹二副会長は、その冒頭、22年版経労委報告の副題である「ポストコロナに向けて、労使協働で持続的成長に結びつくSociety 5.0の実現」を紹介したうえで、企業の付加価値創造力を高めるために、労使が共に取り組むことの重要性を強調した。同報告の概要は次のとおり。

■ はじめに

人口減少下で迎える「ポストコロナ」社会に向けて、わが国の成長力を高めていくためには、労働生産性の向上、労働参加率の上昇、成長分野等への円滑な労働移動を同時に進めていく必要がある。

■ 第1章 人口減少下での成長を実現するポストコロナを見据えた働き方

労働生産性の向上には、インプット(労働投入)を効率化する働き方改革「フェーズⅠ」の継続と、アウトプット(付加価値)の最大化を目指す「フェーズⅡ」への深化が重要である。生産性の向上と労働参加率の上昇のため、多様な人材を受け入れ、その能力発揮と活躍を促す「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方を浸透させていくことが重要である。

多様な人材の活躍推進等の観点から、日本型雇用システムのメリットを活かしながら、必要な見直しを行い、各企業にとって最適な「自社型雇用システム」の確立を目指すことが求められる。

円滑な労働移動の実現に向けては、雇用のセーフティーネットの整備を前提に、主体的なキャリア形成・学び直しに取り組むなど、働き手・企業・政府が一体となって具体的な枠組みをつくり上げていくことが必要である。

地方経済活性化のためには、価値協創の推進やそのための環境整備が不可欠である。中小企業のさらなる発展に向けて、サプライチェーンのデジタル化の加速や、「パートナーシップ構築宣言」の推進による取引適正化、大企業との連携強化が重要である。

■ 第2章 雇用・労働分野における諸課題

男女間の育児休業取得率に大きな差がある現状を踏まえ、男性の育児休業に焦点を当てた改正育児・介護休業法については、経営トップがリーダーシップを発揮し、着実に実施することが肝要である。

雇用保険法については、激変緩和措置を講じたうえで雇用保険料率を引き上げるとともに、国庫負担については雇用情勢や財政状況に応じ機動的に対応できる仕組みに見直される。

■ 第3章 22年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

① 連合「2022春季生活闘争方針」への見解

企業と働き手を取り巻く環境変化への対応の必要性や、コロナ禍で影響を受けている産業・企業への配慮など、基本的な考えにおいて経団連と共通している部分は多い。賃金要求については、「賃上げ分2%程度」「定期昇給相当分含め4%程度」という指標を掲げているが、業種や企業で業績がばらつく「K字型」回復の様相が長期化するなか、一律ではなく、個々の企業に適した対応を検討することが現実的である。

② 経営側の基本スタンス
賃金決定の大原則

「K字型」の景況のなか、22年の春季労使交渉においても、各企業が自社の実情に適した「賃金決定の大原則」に則って検討し、「賃金引き上げ」と「総合的な処遇改善」に取り組んでいくことに変わりはない。

「成長と分配の好循環」実現への社会的期待等も考慮に入れながら、企業として主体的な検討が望まれる。収益が高い水準で推移・増大した企業においては、ベースアップの実施を含めた新しい資本主義の起動にふさわしい賃金引き上げが望まれる。また、さらなる成長をもたらす「人への投資」となり得る主要な施策である総合的処遇改善への取り組みも必要である。

企業の発展と働き手の成長をともに実現するには労使協働が不可欠である。企業と労働組合は「経営のパートナー」として社会課題の解決に共に取り組み、「社会の安定帯」としての役割を果たし、未来志向の労使関係を目指すことが望まれる。

【労働政策本部】