Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月20日 No.3529  高等教育の費用負担のあり方とイノベーション・コモンズ -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は12月15日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)を開催した。日本大学文理学部の末冨芳教授から、奨学金と高等教育の費用負担のあり方について、また、文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部の齋藤禎美計画課長と西村文彦整備計画室長から、国立大学のキャンパス全体を多様な主体が共創できる拠点「イノベーション・コモンズ」(共創拠点)へと転換する計画について、それぞれ説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 奨学金と高等教育の費用負担のあり方(末冨氏)

日本が持続的に経済成長を遂げるには、所得水準にかかわらず、子どもを育てやすい環境が整っていることが重要である。高等教育の無償化や修学支援策はその根幹であり、拡大が必要である。

低所得層には、高校2年時点で高等教育修学支援新制度の周知を徹底し、大学進学と同時に支援を受けられるようにするとともに、大学入学後の成績要件を緩和すべきである。また、中所得層でも半数以上が奨学金なしでは大学に進学できない状況にある。高等教育無償化の対象世帯の所得制限を緩和するとともに、高所得世帯の学生も貸与奨学金を受けられるようにすべきである。特に多子世帯の学生への支援を拡充すべきである。

一方、大学は、受験機会・選抜方法における公平性を確保するほか、特待生入試の実施等により、多様な背景を持つ学生を受け入れるべきである。

若者の奨学金利用を促進するには、返済免除に関する条件の緩和が必要である。所得連動型の奨学金返還制度は、現在でも日本学生支援機構の奨学金において存在するが、活用する者は少ない。安定志向の日本人には好まれにくいと考えられるが、社会人リカレント教育の推進策としては期待できる。

現在、高卒者の約2割は高等教育機関に進学せず、その多くが非熟練労働者として就職している。最もスキルを伸ばす必要のある彼らの教育機会を保障することが残された課題である。

■ イノベーション・コモンズ(齋藤氏、西村氏)

文部科学省は、2021年3月に策定した「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」に基づき、21年度から25年度にかけて、国立大学の施設整備をソフト・ハード一体的に進める。特に、(1)国立大学のキャンパス全体を企業・地方公共団体・市民など多様な主体の連携のもとで創造活動が展開できる「共創」の拠点(イノベーション・コモンズ)へと転換する(2)コロナ禍を踏まえ、オンラインと対面双方のメリットを活かした教育研究に対応する――ことを主眼としている。

国立大学の施設は、わが国最大の「知のインフラ」である。大学を核としたイノベーションの創出に向けて、国立大学のキャンパスを経済界や地方公共団体、市民にもっと活用してほしい。

◇◇◇

懇談終了後、提言「新しい時代に対応した大学教育改革の推進(案)」を審議し、了承した。

【SDGs本部】