Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月3日 No.3531  自律的な働き方の促進に資する富士通の取り組み -労働法規委員会

阿萬野氏

経団連は12月24日、労働法規委員会(冨田哲郎委員長、芳井敬一委員長)をオンラインで開催した。富士通理事の阿萬野晋Employee Success本部長と同本部の大宮泰治Employee Relation統括部シニアマネージャーが同社における新たな働き方と裁量労働制について講演した。概要は次のとおり。

■ Work Life Shift

富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを起点に種々改革を進めている。その一環として「Work Life Shift」と称する働き方の変革に2020年に着手した。これは社員の高い自律性と相互の信頼を前提に、場所や時間にとらわれない働き方を促しながら仕事と生活をトータルに変革することで、「働きやすさ」を追求し、社員のウェルビーイングを実現する取り組みである。具体的には、(1)Smart Working(最適な働き方の実現)(2)Borderless Office(オフィスのあり方の見直し)(3)Culture Change(社内カルチャーの変革)――を柱に据え、「コアなしフレックスタイム制の導入・拡充」「単身赴任の解消」「事業場、在宅、社外サテライトオフィスの目的に応じた使い分け」「1 on 1ミーティングの制度化等によるコミュニケーション活性化」を推進している。

取り組みの結果、毎月平均30時間の通勤時間の減少、睡眠時間の増加、遠隔勤務による単身赴任の解消などの効果があった。さらに、従業員も7割以上が「生産性が向上した」「変わらない」と、生産性が下がったとは認識していないことから、一定の手応えを感じている。

■ Work Life Shift 2.0

一方で、健康状態の把握の難しさやコミュニケーションの不足など、課題も顕在化した。そこで、「働きやすさ」だけでなく「働きがい」を追求し、新しい価値創造につながる変革を継続すべく、「Work Life Shift 2.0」に21年から移行した。(1)Hybrid Workの実践とエクスペリエンス・プレイスへの進化(2)DX企業としての働き方の進化(3)WorkとLifeのシナジー追求――を施策の軸としている。具体的には、(1)社内教育の執務エリアでの実施等、コラボレーションを生む新たなオフィス環境の創造やオンライン・オフラインのベストミックスの検討(2)地方創生への貢献にも資する移住やワーケーション等、スタートアップ企業や地方自治体と連携した創造性を高める働き方の追求(3)男性の育児参加率向上やワーケーションの促進等による社員のウェルビーイング実現――を進めている。

■ 裁量労働制

社員のチャレンジ精神の喚起を目的に、1994年に裁量労働制を導入した。管理職手前の社員(管理職でない社員におけるジョブグレード5段階で、上から2グレードに属する社員)のうち、(1)ふさわしい業務内容(2)所属長の推薦(3)本人の同意――の3要件を満たす者について、労使委員会での決議を経て適用している。制度適用者には成果主義的要素を強めた運用を徹底し、月例給与に定額の手当が支給されるほか、通常の賞与に加えて、成果に応じた業績賞与も支給している。業務遂行方法や時間配分を社員に委ねる裁量労働制が社員の創造性の向上につながると考えている。今後もWork Life Shiftの一環として裁量労働制を活用し、社会に価値を提供できる会社であり続けたい。

【労働法制本部】