Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月17日 No.3533  提言「Innovating Migration Policies~2030年に向けた外国人政策のあり方」を公表

経団連は2月15日、提言「Innovating Migration Policies~2030年に向けた外国人政策のあり方」を公表した。

デジタル化の加速、国際的な人材獲得競争の激化、ダイバーシティの推進といった新しい潮流を踏まえ、あらためて日本の外国人政策について検討する必要が生じている。そこで経団連では、20年5月に産業競争力強化委員会のもとに外国人政策部会を設置し、日本の産業競争力強化の観点から、外国人材の活躍を推進する施策について議論を重ねてきた。提言の概要は次のとおり。

1.基本的考え方~2030年のビジョンと外国人政策における3つの原則

目指すビジョンは、世界各国から優れた才能や技能等が集まって活躍することで、イノベーションと社会課題の解決が加速し、それが日本の産業競争力の強化と持続的発展に貢献する姿である。こうした社会においては、外国人のライフサイクルに寄り添った外国人施策と、出入国在留管理におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していることが期待される。

その実現に向けて、今後の外国人政策に必要な原則として、次の3点を順守することが重要である。

第1は、外国人を単に受け入れる国から、戦略的かつ積極的に「誘致する」国へと入管政策の発想を転換することである。第2は、多様な考え方や価値観を互いに尊重し合う包摂的な環境を整備することである。第3は、受け入れた外国人が活躍し、子育てから引退までのライフサイクル全体を俯瞰して面的な政策を検討・立案・実施することである(図表参照)。こうした努力なしに必要な人材を獲得することは困難といえる。

2030年のビジョンと3原則

2.具体的施策

(1)制度横断的な施策

外国人材は、高度人材、現場人材、留学生など多様だが、いずれにも共通する次の4つの課題に注力すべきである。第1に、外国人政策に関する基本理念・基本法の制定と、戦略的な誘致・データ連携といった省庁横断的な取り組みを一元的に推進する司令塔機能の構築である。

第2に、出入国在留管理のDXに向けて、在留カードとマイナンバーカードを早期に一体化し、出入国在留管理庁、厚生労働省、自治体等が保有するデータを連携させることである。これにより行政手続きを可能な限り効率化するとともに、外国人本人がこうしたデータを活用することも期待できる。

第3に、ビジネスと人権に関して、企業が実施する人権デュー・ディリジェンスを支援することである。

第4に、中長期的な社会統合に向けて、公的機関における多言語対応や日本語教育・文化理解の促進、永住権の取得要件の見直し等である。

(2)各在留資格における施策

高度人材について、デジタル人材やスタートアップの振興に資する人材を戦略的に誘致し、必要な在留手続きを徹底支援することが必要である。

また、労働力不足に対応する特定技能の制度については、社会のインフラ・産業を支えるうえで不可欠な業種等について、受け入れ人数や対象業種を拡大すべきである。加えて、より長期的なキャリアアップが可能な特定技能2号の整備も急務である。

技能実習制度については、データの活用や監視機能の強化による適正化を徹底したうえで、制度の柔軟な見直しが必要となる。

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このほか、企業の受け入れ体制の整備に関する好事例も紹介している。同提言を契機に、外国人材が日本で一層活躍できるよう、政府・企業はじめ関係各所の取り組みの加速に期待する。

【産業政策本部】