Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月17日 No.3533  春季労使交渉・協議の焦点〈3〉 -働き方改革深化の重要性

春季労使交渉・協議が本格化するなか、6回にわたり同交渉・協議の焦点等を解説する。3回目は、働き方改革深化の重要性を取り上げる。

Q まずは「働き方改革」の現状について教えてください。

A 近年、多くの企業は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進など、インプット(労働投入)の効率化を目指す「働き方改革フェーズⅠ」を中心に取り組んできました。経団連の調査によると、「取り組みの成果が得られている」「社内の意識変革が進んだ」との回答がいずれも9割(93.9%、94.6%)を超えるなど、フェーズⅠの取り組みは進展しているといえます。

Q それでは、特に課題はないのでしょうか。

A まず、フェーズⅠの取り組みを生産性向上へと着実につなげるためには、労働時間の削減等だけではなく、業務プロセスの見直し・改善、デジタル技術を活用した自動化・遠隔化等による効率化に取り組む必要があります。それに加えて、今後は、アウトプット(付加価値)の最大化を目指す「働き方改革フェーズⅡ」へと深化させることが極めて重要です。そのカギとなるのが働き手の「エンゲージメント」です。

働き方改革と労働生産性の向上

(図表のクリックで拡大表示)

Q 「エンゲージメント」とは何ですか。

A 世の中ではさまざまに定義されていますが、経団連では、「働き手にとって組織目標の達成と自らの成長の方向性が一致し、『働きがい』『働きやすさ』を感じられる職場環境のなかで、組織や仕事に主体的に貢献する意欲・姿勢を表す概念」と整理しています。企業は、エンゲージメントを高めることを通じて、働き手のイノベーション創出を促すことで、高い付加価値の製品やサービス等を生み出し、飛躍的な労働生産性の向上を実現していくことが求められています。

Q 働き手のエンゲージメントを高めるためには、どのような施策が効果的でしょうか。

A 仕事と育児・介護との両立支援など「働きやすさ」を高める施策に加えて、自律性を重視した、多様で柔軟な働き方といった「働きがい」に着目した施策を推進していくことが大切です。特に、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若い人たちは、仕事を通じて社会課題の解決に貢献したいという意識が高い傾向がみられます。こうした就労観を踏まえた対応も必要です。
また、コロナ禍を契機として急速に広がったテレワークなど柔軟な働き方をエンゲージメントの向上につなげるために、働き手が場所・時間を柔軟に選んで働くことができる環境を整備することも有効でしょう。他方で、現場等に出勤する必要のある働き手(エッセンシャルワーカー)がいることを忘れてはなりません。職場における感染予防を徹底するとともに、エッセンシャルワーカーに対して、ICT活用による業務効率化や交代制によるテレワークなどを進めていくことも重要です。

Q 働き方改革フェーズⅡを進めていく際の留意点はありますか。

A フェーズⅡの推進にあたっては、自社の事業特性に合った指標を定め、エンゲージメントを高める施策の効果を測定・評価する必要があります。実際に用いられている指標としては、社員の意識調査を通じた「業務効率の改善状況」や「自律的な働き方の実現度」の把握のほか、社員一人当たり・部門・全社の「生産性」「収益性」「付加価値」の動向などがあります。施策の効果を測定・評価したうえで、課題を整理し、必要に応じて改善していくというPDCAサイクルをしっかりと回し、不断に努力していくことが望まれます。

【労働政策本部】


春季労使交渉・協議の焦点(全6回)
〈1〉連合の春季生活闘争方針
〈2〉経営側の基本スタンス
〈3〉働き方改革深化の重要性
〈4〉日本型雇用システムの見直し
〈5〉育児・介護休業法の改正
〈6〉雇用保険法の改正