Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月24日 No.3534  提言「経済安全保障法制に関する意見」を公表 -小林経済安保担当相に建議

小林大臣(左から3人目)へ建議

経団連は2月9日、政府が今次通常国会への提出を目指す経済安全保障推進法案に向け、提言「経済安全保障法制に関する意見~有識者会議提言を踏まえて」を取りまとめ、小林鷹之経済安全保障担当大臣に建議した。

建議にあたり片野坂真哉副会長は、政府が新たな法案を準備していることを経団連として支持していると発言。経済安全保障法制に関する有識者会議の提言(有識者会議提言)は全体として経済活動の自由や国際ルールとの整合性に配慮した内容だと指摘したうえで、法案の策定にあたり経団連の意見をくんでほしいと訴えた。

小林大臣は、経団連の提言を踏まえて法案の策定準備を加速したいと述べたうえで、法案成立後にも細部について産業界と緊密に意思疎通したいと表明した。経団連提言の概要は次のとおり。

※ 「 」内は有識者会議提言からの抜粋

Ⅰ.今次法制化に関する意見

企業が国内外問わずに自由に事業活動を展開できる環境を維持・改善することが重要であり、今次法制化にあたってもこの点に留意することが求められる。また、諸外国の取り組みに照らして、企業活動に過度な制約を課すべきではない。

1.サプライチェーンの強靱化

「民間事業者による創意工夫を生かした事業活動をインセンティブ等で後押しすることが重要」とされていることは適切である。制度の対象を絞り込むべきとされていることも妥当である。一方、調査に関しては「事業者の応答」を法的に担保できる枠組みを整備することが必要としているが、対象をできる限り絞り込むことで、事業者が調査の目的・意義を十分理解できるようにすることが重要である。

2.基幹インフラの安全性・信頼性の確保

安全性・信頼性を確保するための措置を導入する範囲は「真に必要なものに限定すること」が求められ、法案および下位法令の規定ぶりを注視していく。遡及適用については「規制の実行可能性や事業者負担に鑑み慎重に判断するべき」とされており、法案および下位法令の規定ぶりを注視し、必要に応じて事業者負担を訴えていく。

3.官民技術協力

先端的な重要技術の研究開発等に向けて産学官のエコシステムを形成することが重要である。特にアカデミアが経済安全保障の強化推進のための先端重要技術に関するプロジェクトの意義を適正に理解・評価する環境を醸成することが必要である。また、国の安全保障上の具体的なニーズが産学との間で共有されることを期待する。

4.特許出願の非公開化

非公開の対象となる発明、特にデュアルユース技術について「支障が少ないケースに限定するべき」である。外国出願の制限の対象も「十分に限定された範囲とするべき」であり、法案および下位法令の規定ぶりを注視していく。

Ⅱ.並行して検討・推進すべき施策

経済安全保障に関する施策を実効あるものとするには、経済インテリジェンス機能の強化が不可欠である。また、中長期的課題として、相手国から信頼されるに足る、実効性のある情報保全制度の導入を目指すべきである。さらに、他国による法令の域外適用や、人権問題への対応も求められる。このほか、国内投資の拡大を促す環境の整備等に取り組む必要がある。

【国際経済本部】