Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月24日 No.3534  春季労使交渉・協議の焦点〈4〉 -日本型雇用システムの見直し

春季労使交渉・協議が本格化するなか、6回にわたり同交渉・協議の焦点等を解説する。4回目は、日本型雇用システムの見直しについて取り上げる。

Q 「日本型雇用システム」の特徴を教えてください。

A 日本型雇用システムは、(1)新卒一括採用(2)長期・終身雇用(3)年功型賃金(4)企業内人材育成――などを主な特徴としており、メンバーシップ型雇用とも呼ばれています。
新卒一括採用は、企業が計画的に採用しやすく、日本の若年者の失業率が国際的にみて低い要因とも考えられています。また、長期・終身雇用と年功型賃金により、社員が雇用面で安心感を持ち、経済面で安定感が得られることで、高い定着率とロイヤルティーにつながっています。企業内人材育成は、OJTなど業務遂行を通じた育成や異動等によって、多様な職務遂行能力(職能)を備えた人材の育成に適しています。このように日本型雇用システムにはさまざまなメリットがあり、多くの企業で導入されています。

Q それなのに、なぜ、日本型雇用システムの見直しを呼びかけているのですか。

A 経営環境の変化や就労ニーズの多様化などに伴い、課題が顕在化してきているからです。
例えば、大企業が新卒一括採用を重視するなか、相対的に中途採用が抑制されてきました。また、年功型賃金は、実際に発揮した職能や成果と賃金水準との間に乖離が生じやすいという問題があります。このことが、ジョブ型雇用の導入・活用や高度・専門人材の採用・適正な処遇を妨げ、長期・終身雇用と相まって、結果的に転職等の労働移動を抑制している一因といわれています。さらに、OJT中心の企業内人材育成では、自社以外の企業でも評価される人材が育成されにくいとの指摘もあります。

Q 見直しの方向性を教えてください。

A 日本型雇用システムのメリットは活かしつつ、多様な人材のエンゲージメントを高める観点から必要な見直しを行い、各企業にとって最適な「自社型雇用システム」の確立を目指すことが検討の方向性になります。
具体的には、(1)通年採用や中途・経験者採用の導入・拡大など採用方法の多様化(2)自社の企業戦略を踏まえたジョブ型雇用の導入・活用(3)働き手が担う仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度への見直し(4)社内公募制やフリーエージェント制など主体的かつ複線型のキャリアパスの実現――などが考えられます。こうした諸施策を見直し、自社にとって最適な組み合わせを検討していくことが望まれます。

自社型雇用システム 検討の方向性

Q 諸施策の見直しは、春季労使交渉・協議の短い期間で行えるとは思えませんが。

A そのとおりです。先ほど例示した諸施策は、多岐にわたり、検討にはかなりの時間を要すると思います。今次交渉・協議では、例えば、労使協議会など継続して検討する場を設置する、具体的な検討項目について労使で合意するなど、「自社型雇用システム」の確立に向けて、労使で歩み出すことを願っています。

【労働政策本部】


春季労使交渉・協議の焦点(全6回)
〈1〉連合の春季生活闘争方針
〈2〉経営側の基本スタンス
〈3〉働き方改革深化の重要性
〈4〉日本型雇用システムの見直し
〈5〉育児・介護休業法の改正
〈6〉雇用保険法の改正