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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月3日 No.3535 今後50年の日中関係をどう構想するか -中国委員会

川島氏

経団連は2月7日、中国委員会(佐藤康博委員長、橋本英二委員長)を開催した。川島真東京大学大学院総合文化研究科教授・21世紀政策研究所研究主幹から、今後50年の日中関係の展望等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 世界の経済情勢

現在、世界史的な、あるいは近代以来の大きな変化が到来しようとしている。第一に、GDPの趨勢がある。かつて世界の富の中心は、人口に比例して中国、インドにあったが、産業革命によって、次第に欧米へと移行した。しかし、20世紀末に至って、技術力でキャッチアップした中国やインドの富が再び増加する傾向にある。中国のGDPは、2030年前後に米国を抜いて世界首位になることが確実視されている。

第二に、経済成長と民主化の関係がある。従来、経済発展が民主化をもたらすと考えられていたが、中国のように経済が発展しても民主化につながらない国が出てきた。G7が世界経済の中心ではなくなり、民主主義を採用する国が頭打ちとなるなか、西欧先進国を中心に世界の主流と考えられていた民主主義の価値基準は世界を主導し得ない可能性がある。現在、今後も民主主義が世界の秩序の基礎として維持されるかどうかの境目にある。だが、民主主義の価値、経済安全保障、軍事安全保障、台湾問題などが米中対立の焦点となるなか、特に民主主義などの価値問題については、米中のどちらを選ぶのかということよりも、新興国や途上国などからの視点を意識し、多数派をつくっていくことが必要だろう。

■ 国交正常化当時との状況の変化

日中が国交正常化した1972年前後は、日本は高度成長に伴い世界第2位の経済大国へと躍進中であった一方、中国は文化大革命のさなかで貧しい状態にあった。しかし、今日では日中の経済力は完全に逆転した。また、冷戦期の69年に起きた中国とソ連の衝突を契機に、中国は西側諸国との関係改善に踏み切ったが、国際情勢も当時と今とでは大きく異なっている。日中国交正常化当時の日本の政治家は、中国侵略に対する贖罪意識があったが、現在は必ずしもそうした感情があるわけではない。国交正常化の前提となった状況が現在は変化していることを認識し、新たな日中関係を考える必要がある。

■ 日中関係のあり方

日中の経済力は2010年に逆転し、現在は中国のGDPは日本のそれの3倍となり、さらに差が広がると予想されている。今後、日中関係を考えるうえで、中国の圧倒的なパワーのなかでの日本の立ち位置や国益像を明確に持っておく必要がある。

日中は、高齢化や環境問題など共通の課題を通じて当面は協力関係を築くことができるが、朝鮮半島、台湾海峡問題等については、何が日本の国益にかなうのか吟味し、世界情勢や米中関係も視野に入れた確固たる対応が必要である。日中双方の国民感情の変化や民主主義と社会主義という体制の違いを踏まえたうえで、大局的な目線で日中関係を構築する必要がある。

【国際協力本部】

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