Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月3日 No.3535  世界の主要金融センター香港の現状と展望 -日本・香港経済委員会

岡田大使

経団連は2月4日、日本・香港経済委員会(國部毅委員長)を開催した。在香港日本国総領事館の岡田健一総領事(大使)から、最新の香港情勢について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 中国中央政府の影響

政治面では、これまでの「高度な自治」から中国共産党の強いコントロール下に置かれるようになった。また、報道・教育等における自由を制限する例も出てきており、子どもの教育への懸念から海外移住など人材流出の増加がみられる。他方、英国最高裁判事等が香港の終審裁判所で判事を兼職していることもあり、司法の独立については今のところ維持されている。香港に対する反外国制裁法の適用見送りや、香港証券取引所CEOの外国人登用など、香港には依然として一定の裁量権があることを示す事例も存在する。

■ 香港経済の強みは健在

中央政府は香港の経済的な有用性・価値を認めており、これらを毀損せぬよう慎重に対応し、上述の裁量権を認めている。香港の治安は完全に回復し、国家安全法に対する日本企業の懸念も過去最低レベルになった。対内直接投資額は2019~20年で増加傾向にあり、香港は引き続き、世界有数の投資先である。香港市場全体の株価の低下や、中央政府の国内ハイテク関連企業規制強化などにより香港市場でのIPOが不活性化したものの、金融センターとしての地位が低下したと判断するのは時期尚早である。各種のランキングにおいて香港が順位を下げているものもあるが、一貫して首位を保っているものや、順位を戻しているものもある。世界金融センター指数(GFCI=The Global Financial Centres Index)でも、香港の総合順位は、20年3月公表の第27回においてデモの影響等により6位に下落した後、21年9月公表の第30回において再び3位に返り咲くなど従来の水準に戻しつつある。さらに香港はデジタル化や人材といった個別項目では以前より順位を上げている。

■ 今後の動向を注視

香港の金融センターおよび中国へのゲートウエーとしての機能は、維持・強化されているといえる。GBA(大湾区)や北部メトロポリスといった新たなビジネスチャンスも生まれている。欧米企業の撤退は下げ止まっており、関連する報道や日本本社の悲観的な受け止めは、必ずしも実態を反映していないと感じている。

他方、香港は「ゼロコロナ」政策を堅持する中央政府の方針に追随しており、厳しすぎる措置に各国のビジネス界から不満の声もあるようだ。新型コロナウイルス対策を含め、香港全体に対する大陸の影響が急速に強まっている点には注意が必要である。

【国際協力本部】