Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月3日 No.3535  レジリエンスおよびヘルスケア分野におけるイノベーションとインパクト -金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ

経団連は2月3日、金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ(銭谷美幸座長)をオンラインで開催した。KDDIの本郷郁子経営管理本部IR室長からKDDIのレジリエンスに関する取り組みについて、また、第一生命ホールディングスの河合信彦経営企画部ヘルスサポート事業開発室長ならびに石井博子責任投資推進部長から第一生命グループにおける健康・医療領域の取り組みについて、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ KDDIのレジリエンスに関する取り組み

KDDIでは、Society 5.0の実現を5Gで加速する、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、リアルとネットの融合に向けた注力すべき技術分野を特定している。そのなかでレジリエンスについて、まずは通信会社として災害が発生した場合の停波基地局の削減、ならびに復旧にかかる延べ日数の短縮に取り組んでいる。今後、自動運転やスマートシティの実現に向け、コネクテッドカーやセンサーなど通信モジュール(IoT回線)数が急速に増加することが見込まれている。そこで、次世代セキュリティのニーズに対応する超高速共通暗号方式(Rocca)など未来社会に向けた研究を含め、イノベーション創出に取り組んでいる。

こうした取り組みについて、投資家により良い開示ができるよう、当社は昨年、トライアルとして、自社の企業価値と非財務情報との関係性を分析した。具体的には、さまざまな部署と連携して、多様な非財務情報を収集し、PBRとESG(環境・社会・ガバナンス)指標との関係性を調べた。その結果、セキュリティ人財の育成やネットワーク人口カバー率、ベンチャー企業への出資件数などへの積極的な取り組みが、企業価値の向上に実際につながっていることが示された。これは従業員へのエンゲージメントにもつながると考える。引き続き、より良い開示・投資家との対話に向けて、先進的な取り組みを進めたい。

■ 第一生命の健康寿命に関する取り組み

第一生命では、健康寿命の延伸、医療費の抑制への貢献を進めている。その取り組みの一つが「Healstep」である。これは、将来医療費予測AIを活用したデータ分析や健康増進アプリを通じて、保健事業運営の省力化、医療費の抑制に貢献する。また、その効果検証も実施している。当社組合員モニターを対象とした健康増進アプリ使用後の意識・行動変化を調査したところ、利用者の7割超の運動習慣が改善するなど、アウトカム/インパクトを示すことができた。こうした社会的インパクト創出は、小さな効果検証の積み重ねが重要であり、引き続き、取り組みを進めたい。

また当社は機関投資家として、ESG投資を資産運用の柱と位置付け、運用収益の獲得と社会課題解決の両立を目指している。特に第一生命らしいESG投資の一つとして、「ポジティブ・インパクトの創出」を進めている。

例えば、約8000億円に上る自社のESG投融資テーマは、直接的にポジティブ・インパクトの創出を目指す投資ではない。しかし、そのインパクトを可能な範囲で算出したところ、GHG削減貢献量約80万トン、新興国の受益者数約50万人となり、当社の取り組みのポジティブな影響を可視化できた。

さらに、より直接的にインパクト創出を目指すインパクト投資も進めており、AI創薬や新たながん免疫療法の開発などを行うスタートアップなどにも投資している。

今後、インパクト投資の規模の拡大に加えて、ESG投融資テーマにおいても、可能な限りインパクト開示計測を進め、金融を通じたポジティブ・インパクトの可視化とその一層の創出に取り組みたい。

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その後、インパクト投資の指標を選定した考えやプロセスなどについて意見を交換した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】