Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月10日 No.3536  アルジェリアの政治改革と産業多角化の動き -河野駐アルジェリア大使から聴く/日本アルジェリア経済委員会

河野大使

経団連の日本アルジェリア経済委員会(佐藤雅之委員長)は2月17日、河野章駐アルジェリア特命全権大使との懇談会をオンラインで開催した。河野大使から、アルジェリアの政治経済情勢を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ テブン大統領による政治機構改革が進展

2019年、大規模な民主化デモによってブーテフリカ大統領が退陣した後、新たに就任したテブン大統領は、「新生アルジェリア」の実現を掲げて、広範な改革に取り組んでいる。

21年は、新憲法の公布、国民議会選挙と地方議会選挙が行われ、新生アルジェリアの実現に向けた「機構改革の年」と位置付けられた。年初に公布された新憲法では、前大統領の4期20年に及ぶ長期統治への反省から、大統領だけでなく国会議員の任期が2期に制限されるとともに、法の支配強化のため、憲法裁判所が設置された。同年6月に前倒しで行われた国民議会選挙の投票率は低調であった。しかし、無所属議員が躍進する一方で、伝統的な政党であるFLN(国民解放戦線)は第1党を維持し底堅さをみせた。

外交では、歴史問題に起因するフランスとの緊張、モロッコとの外交関係断絶といった問題を抱えつつ、対アラブ・アフリカでは近隣諸国への要人訪問等、積極的な外交を展開している。また、国連安保理非常任理事国に立候補する動きもあり、アルジェリアは国際舞台における存在感を回復しつつある。

■ 苦境にある経済情勢と産業多角化の推進

アルジェリア経済は、炭化水素の輸出に大きく依存している。コロナ禍によって20年の経済成長率はマイナス5%となり、その後の回復も緩やかな見通しである。外貨準備高もピークの13年の約4分の1にまで減少しており、経済・財政改革が急務とされる。

こうした状況を改善すべく、アルジェリア政府は、21年に発表した経済再生計画において、産業の多角化、貿易・投資環境の改善等を優先課題として挙げた。

産業多角化の兆しとして、21年には、タイヤ、肥料、鉄鋼等の輸出が顕著に拡大した。また、大型の太陽光発電所の入札や建設が開始され、今後の再生可能エネルギーへの転換に向けたビジネスが進展し始めている。将来的には、グリーン水素、アンモニアの活用も視野に入る。

21年の「機構改革の年」を経て、22年は「経済の年」と位置付けられている。アルジェリアは豊富な炭化水素に加えて、アフリカ最大の広大な国土と4400万人の人口を擁しており、こうしたポテンシャルを活かした発展に期待したい。

【国際協力本部】