Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月24日 No.3538  公正取引委員会幹部と意見交換 -経済法規委員会競争法部会

古谷氏

経団連は3月1日、経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)をオンラインで開催した。公正取引委員会(公取委)の古谷一之委員長、菅久修一事務総長ら幹部から、公取委の最近の施策について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ

政府は2021年12月、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を策定した。中小企業等が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に価格転嫁できるよう、政府横断的に転嫁対策に取り組む。

公取委では、中小企業庁や事業所管省庁と連携し、業種別の法遵守状況を点検する新たな仕組み(価格転嫁円滑化スキーム)を創設する。6月までに報告書を取りまとめ、その後、自主点検の要請や重点立ち入り調査を実施する。

また、優越的地位の濫用に関する緊急調査や、大企業とスタートアップとの取引に関する調査を実施する。加えて、今後の検討課題として優越的地位の濫用ガイドラインの改定を検討する。

■ デジタル市場における取り組み

公取委では、大規模デジタルプラットフォーム(DPF)事業者の企業結合案件を含め、さまざまな個別案件を審査している。また、公取委の考え方の明確化や、実態の解明も重要であり、ガイドラインの制定・改定、実態調査等にも取り組んでいる。

DPF関係の事件審査には多大な時間を要することから、事業者が自主的に改善措置を講じるならば、命令という形式にはこだわらず、確約手続き等も含めて対応方法を考えている。また、デジタル分野の企業結合案件では、DPF事業者が複数の国・地域の競争当局に届け出ることが多い。各国当局とも連携して対処している。

19年10月、オンラインモールとアプリストアの市場について実態調査報告書を公表した。これを踏まえて、21年4月から、同市場を対象にデジタルプラットフォーム取引透明化法を適用している。同法では、事業者に定期的に報告書を提出させ、政府が運営状況を評価し、その結果を公表することで、事業者に自主的な改善を促すこととしている。

また同年2月には、デジタル広告市場の実態調査結果も公表した。政府として、同市場も透明化法の対象にすべきであるとの結論に至っており、現在、法制面での対応を検討している。

■ 企業結合審査の現状と課題

近年、経済のデジタル化や大規模な業界再編の動きがあり、企業結合審査への関心が上昇している。公取委でも、21年度から担当審議官を設置し、上席審査専門官も増員するなど、組織面での体制強化を進めてきた。

近年、需要減少を契機とした経営統合が増えている。企業結合審査では従来、市場シェア以外にもさまざまな要素を考慮している。市場縮小によって供給過剰になり、需要者からの競争圧力が強まる場合や、企業結合がなければ事業者の一方が市場から退出する蓋然性が高い場合には、それらの事情も考慮するとガイドラインにも明記されている。また、19年12月のガイドライン改定で、一定の取引分野の規模が、複数事業者による事業継続が困難なほど小さい場合には、そうした状況も考慮することが盛り込まれた。このような事情を主張する場合、早い段階から経済分析の活用などによりファクトを主張して、公取側とコミュニケーションを取ることが、円滑に企業結合審査を進めるうえで重要であると考えられる。

【経済基盤本部】