Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月31日 No.3539  全米各州探訪(17)~ワシントン州、アラスカ州、ハワイ州 -新・ワシントンレポート<17>

本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。

49.ワシントン州

1889年に連邦に加盟した42番目の州。住民の請願に基づき53年にオレゴン準州から分離したワシントン準州を前身とする。なお、同請願では域内を流れるコロンビア川にちなむ「コロンビア準州」の名が提案されていたが、首都が位置するコロンビア特別区(ワシントンDC)との混同が懸念されるとして、初代大統領の名前に基づく準州名が採用された。

ワシントン州旗には米国の初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像がかたどられている。歴代大統領の名前を冠する自治体は多く存在するが州としては同州が唯一である

州東部を中心に、州面積の過半を占める農地で小麦、果物等の多様な農産品を生産している。林業・水産業も盛んである。

最大都市シアトルはボーイング創業の地であり、今日でも同市近郊に主力組み立て工場が立地している。同都市圏にはほかに、アマゾン、マイクロソフト、コストコ、スターバックスといった著名な有力企業の本社がある。日本企業も幅広い業種から180社以上が進出している。

北はカナダ、西は太平洋に面し、州民の4割が貿易関連に従事する。同州にとって日本は輸出入とも第3位の貿易相手であり、航空機や農産物・食品を輸出し、自動車や航空機部品等を輸入している。

政治的には民主党が強い。過去9回の大統領選では同党が連勝しているほか、2018年からは州知事と州上下院も民主党が押さえている。同州選出の連邦下院議員には、アダム・スミス下院軍事委員長や、民主党左派の進歩派議員連盟代表のプラミラ・ジャヤパル議員がいる。

50.アラスカ州

もとは18世紀にロシア帝国が統治・領有した地域から成る。1867年、720万ドル(現在の価値で1.3億ドル程度)で米国が購入した。当初は不毛な氷雪地を買ったとして「スワード(国務長官)の愚行」と非難されながらも、段階的な行政の統合を経て、1959年、49番目の州として連邦に加盟した。

州面積は50州最大の170万平方キロメートルである。これは、2~4位の州(テキサス、カリフォルニア、モンタナ)の合計よりも広く、モンゴルやイランを上回る。一方人口は70万人と、ワシントンDCをわずかに上回る程度であり、人口密度は全米で最も低い。

北米最高峰のデナリ山(標高6190メートル)や300万個以上の湖など豊かな自然を擁し、観光業が一大産業となっている。水産業や林業も盛んである。

全米6位の産油州であり、州予算の約85%を石油関連収入で賄う。天然ガスや、金、亜鉛といった金属鉱物の産出も経済を支える。

アンカレジ国際空港は、冷戦期に東アジア―欧州便の給油地として活用された。当時のソビエト連邦領空の開放と航続可能距離の伸長に伴って旅客便の寄港は減少したが、近年は北半球各地へのアクセスの良さから、貨物便の利用が増加している。

政治面では強力な共和党支持であり、州昇格以来、大統領選で民主党候補を選んだのは1回(64年のジョンソン)だけである。同州選出のリサ・マコウスキー上院議員(共和党)は中道派として知られる。トランプ前大統領の弾劾に賛成した7名の共和党上院議員のなかで唯一、今秋再選を争う議員である。また、3月18日に死去したドン・ヤング下院議員は、在職49年目で下院最長老だった。

51.ハワイ州

1810年、欧州の軍事技術を活用したカメハメハ一世がハワイ統一を実現し、ハワイ王国を打ち立てたことに端を発する。同王国は欧米の干渉と米国主導のクーデターを経て打倒され、98年に米国に併合された。州となったのは1959年であり、50州で最も新しい州である。

人種でみると、最も多いアジア系が人口の4割、白人が2割、太平洋島嶼系が1割となっているほか、複数人種の混血も2割を占める。王国時代から多くの日本人移民を受け入れてきた歴史もあり、日系人数は17万人と、50州ではカリフォルニア州(25万人)に次いで多い。

経済の主柱となっているのは観光業であり、就労人口の15%近くが関連業務に従事する。2019年には年間1000万人を超える観光客が訪れている。このうち日本からの観光客は約160万人と、米国本土からの690万人に次ぎ、外国としては最大である。日本企業の進出は鉄道事業や地元保険企業の買収などを含めて60社を超える。

軍需も経済を支える。同州は長年にわたり強化されてきた重要な米軍の拠点であり、インド太平洋を管轄する四軍の司令部がオアフ島に集中している。

政治面では、強固な民主党支持州である。大統領選では1988年以来、民主党候補が連勝しているほか、現在は連邦上下院議席、州知事、州議会上下院多数派のすべてを民主党が押さえている。同州選出のメイジー・ヒロノ上院議員は福島県生まれで、連邦上院初のアジア系女性議員である。

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各州探訪シリーズは、今回で終了です。

【米国事務所】

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