Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月14日 No.3541  ウクライナ情勢を受けたエネルギー動向に関するウェビナーを開催 -日本エネルギー経済研究所の小山専務理事に聴く

小山氏

経団連は3月22日、ウクライナ情勢を受けたエネルギー動向に関するウェビナーを開催した。日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事から説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ エネルギー資源価格の動向と国民生活・事業活動への影響

コロナ禍以降、エネルギーを取り巻く国際情勢には大きな変化が生じた。石油・天然ガス等のエネルギー価格は一時大幅に下落したが、需要の回復等に伴い、2021年後半から高騰した。こうした価格トレンドのなかで、ロシアによるウクライナへの侵攻が起こった。ロシアは世界の石油の10%強、天然ガスの4分の1の輸出を占めるエネルギー大国である。そのため、米・欧・日が、各国の事情に応じエネルギー禁輸措置も含めた経済制裁を行うなか、世界的に供給不安が高まり、石油・天然ガス価格ともに高騰した。特に欧州のガス価格は過去にもほぼ例を見ない異常な高値となった。経済制裁への対抗措置としての輸出停止やエネルギーインフラの損傷などにより、今後ロシアからのエネルギー供給が途絶するおそれもあり、状況を注視する必要がある。

エネルギーは国民生活に必要不可欠な財であり、今般の記録的な価格の値上がりは世界経済・日本経済に大きな影響を及ぼしている。とりわけ、エネルギー輸入国である日本にとって、急激な価格の上昇は国民生活・事業活動のコスト増に直結する。欧米各国と同様、日本においても対応・救済措置が導入・検討されているものの、本格的なエネルギー安全保障・安定供給対策にも着手する必要がある。

■ 今後の方向性

市場の安定化に向けて、まずは供給源を確保する必要がある。この点、石油には産油国の供給余力の活用や備蓄放出など、代替供給源が存在する。短期的には、世界最大の余剰生産能力を持つサウジアラビアの対応が重要なカギを握る。中長期的には、核協議の進展によるイランの増産などが期待できる。他方、天然ガスは代替供給源が現時点で存在しないため、ロシアの供給途絶が起これば、消費国間で取り合いになるおそれがある。

今般のウクライナ情勢は、エネルギー政策の3E(エネルギーの安定供給・安全保障、環境適合性、経済効率性)のなかでも、エネルギー安定供給・安全保障の重要性を再認識させた。G7と足並みをそろえた足元でのロシア対応も重要であるが、そもそもエネルギー自給率が低いわが国としては、国内のエネルギー安定供給確保の視点を踏まえた戦略的な取り組みが必要である。こうした観点から、供給源の多角化、上流開発投資の促進なども、一層精力的に行っていくべきである。

エネルギー価格の上昇や供給不安が顕在化するなかで、国際情勢に左右されにくい準国産エネルギーである原子力にあらためてスポットライトが当たっている。ロシアによる発電所に対する攻撃によって顕在化した新たなリスクへの対応を前提に、わが国としても、原子力を含めたエネルギーのベストミックスのあり方を真剣に考える必要がある。

【環境エネルギー本部】