Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月21日 No.3542  個人データの適正利用に向けたシンポジウムを開催

経団連(十倉雅和会長)は3月31日、個人データの適正利用に向けたシンポジウムをオンラインで開催した。同シンポジウムは、個人データの適正利用に関する取り組みの紹介や多様なステークホルダーとの対話を通じて、経団連が2019年10月に公表した「個人データ適正利用経営宣言」(経営宣言)(注)の実効性を高めることを目的として開催したもの。

冒頭、篠原弘道副会長・デジタルエコノミー推進委員長は、「個人データ活用を進展させるためには、活用の目的、活用により得られるメリット、想定されるリスクを提示したうえで、企業が利用者目線に立ち、社会とのコミュニケーションを深めることが有効である。個人の理解を得るためには、企業が新たな商品やサービスの提供を通じて、個人の目に見える『肌感のある』メリットを提示することが必要である」と述べた。そのうえで、同シンポジウムでの議論を通じて、個人データの適正な利用に向けた企業と社会との対話がより一層深まることへの期待を示した。

続いて、経営宣言の原則1~3の周知に向けて、有識者が登壇。(1)原則1は、浦川伸一デジタルエコノミー推進委員会企画部会長が、「個人データ活用に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)経営と人材育成に関する産業界の取り組み」、野村克哉NTTドコモ法務部長が、「同社におけるデータガバナンスの取り組み」(2)原則2は、石井夏生利中央大学国際情報学部教授が、「個人情報保護法制の国内外の動向」(3)原則3は、渡邉友範日立製作所サービス&プラットフォームビジネスユニットLumada Innovation Hub Senior Directorが、「パーソナルデータの利活用とプライバシー保護」――について、それぞれ講演した。

講演後のパネルディスカッション(モデレーター=若目田光生デジタルエコノミー推進委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ主査)では、「Society 5.0の実現に向けた個人データ活用のあり方」をテーマに、個人の信頼獲得に向けた企業の取り組み、DFFT(Data Free Flow with Trust)実現に向けて求められる対応について議論した。日置巴美三浦法律事務所パートナー弁護士は、近時の個人情報保護法の改正内容やプライバシーガバナンスのあり方等について、また、越塚登東京大学大学院情報学環教授は、分野間データ連携基盤DATA-EX等について、それぞれ紹介した。浦川部会長は、「DFFT推進に向け、経営層が開発や事業、法令遵守等の各担当部門と個人情報保護や技術等の面で連携しながら個人データの活用を進めることが必要である」と述べ、個人データの活用に向けた経営層と関係部門の連携の必要性を示した。最後に、渡辺良経済広報センター専務理事・事務局長が、同センターのウェブページ「個人データの利活用に関する生活者の疑問について考える」について説明した。同ウェブページでは、個人データの利用目的や第三者・外国への提供、セキュリティ対策等、各個人が日常生活のなかで感じている七つの疑問について、理解を深めるための情報やウェブサイトを、キャラクターの案内付きでわかりやすく紹介している。

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個人の安心・安全を担保しながらデータの適正な活用を進めることで、さまざまな社会的課題の解決や新しい価値の創出に寄与するため、経団連は引き続き経営宣言を広く周知するとともに、多様なステークホルダーと積極的に対話を重ねていく。

※ 経済広報センター「個人データの利活用に関する生活者の疑問について考える」
https://www.kkc.or.jp/personaldata/

(注)個人データの適正な利用を進めるため、経済界として、三つの原則(原則1「経営者のアカウンタビリティの確保」、原則2「個人の安心・安全の確保」、原則3「個人データ活用に関する取り組みの推進」)の実践を宣言

【産業技術本部】